老いた後、どこで暮らすか――我がコト、我が親コトの読者に

レビュー

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住まいで「老活」

『住まいで「老活」』

著者
安楽 玲子 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784004317241
価格
886円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

介護出家の覚悟ができないアナタに

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 身体なり脳味噌なりの自由が利かなくなってきたら、家を出て施設に入る。

 そういう介護出家の覚悟が固まっていて備えも進んでます、なんて危篤、もとい、奇特な皆様以外は一度、手に取ってみてほしいのが『住まいで「老活」』。

 老いて後、どこに住んで、どう暮らすのか。それは誰と一緒の生活なのか。カネはどれくらい必要になるのか……あたりの基本的なレベルから疑問や選択肢を示してくれるのがまずありがたくて、それは「ついの住まい」の考え方がわかるから。我がコトとなる高齢者、我が親のコトになる40代50代の両方に役に立つ。

 著者の安楽玲子は在宅介護に通じた建築家ゆえ、もうひとつの話の軸はリフォーム術や住宅選びで、その目的は、できるだけ長く、できれば最期まで、自宅で過ごせるようにすること。痴呆には改築新築転居はマイナスという医療の常識をひっくり返すわ、家や機器についての建築や福祉のプロの無知無策を指摘するわ、読みどころは多い。

 ちょともったいないのは、スラスラ読みやすい今どきの新書ではないこと。中味は濃いのに、役所が平日の昼間にやるセミナーみたいな素っ気ないタイトルが示すとおり、読者へのサービス精神は原稿にも図表にも薄めです。もっとも、同じ岩波新書の6月刊には『賢い患者』なんてのもあって、中高年層向けの実用書という、眉唾モノが山積みの分野に、お硬い版元が本腰を入れてきてるのは、いいニュースかと。

新潮社 週刊新潮
2018年7月12日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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