『一発屋芸人列伝』 山田ルイ53世著

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一発屋芸人列伝

『一発屋芸人列伝』

著者
山田ルイ53世 [著]
出版社
新潮社
ISBN
9784103519218
発売日
2018/05/31
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『一発屋芸人列伝』 山田ルイ53世著

[レビュアー] 三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

ゴールなき人生の本質

 自他共に認める一発屋。連日テレビをはしごし、CMやイベントに駆り出される。そんな華やかな世界に躍り出て社会現象を巻きおこしたと思ったら……消えた。「ルネッサーンス!」でおなじみ、髭(ひげ)男爵の山田ルイ53世さんが同じく一発屋の芸人たちにインタビューをして回ったのがこの本だ。

 共演させていただいた経験からして、山田さんは「自分の頭で考える」タイプだ。ちょっとした発言にも繊細さを感じるし、それは業界内での気遣いといったものを超えている。きっと人間に対する観察眼に長(た)けておられるのだろうと思う。そんな山田さんが本書では、当時テレビの中でなかなか見せなかった腹黒い批評精神を発揮し、温かくも鋭い言葉に紡いでいる。

 本書は、一発屋として「消えて」いった芸人たちを追いかけることをテーマとしている。だから、成功者を追いかける伝記と違って、登場人物の存在意義やゴールが定まっていない。

 一発屋の旬が終わっても、彼ら自身は消えないし、人生が終わるわけでもない。芸歴すら、終わらない。彼らは今どこで何をしていて、何を考えているのか。そんな当然の疑問をテレビで取り上げようとすれば、大抵「あの人はいま」式の自虐企画になってしまう。そこで晒(さら)け出される彼らの「素顔」は多くの場合作り手側の先入観を確認し強化するためだけの設定である。

 山田さんはそんな企画で彼らが披露しそうな表層を剥いで、彼らの人生の本質に迫る。成功物語にあるようにはじめからゴールが設定された人生なんて嘘(うそ)くさい。本書の中の芸人たちは、それぞれに強烈な個性を持ち、何かのこだわりがあり、変転する人生を生きる。人間としてとても面白い人びとなのだ。

 最後に登場するのが、山田さんご本人と「ひぐち君」だ。二人の述懐はほろ苦いが、コンビや仲間が別々の道を歩んでいくということに、何らかの希望が感じられた。夏休みにぜひ。

 ◇やまだるいごじゅうさんせい=お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。著書に『ヒキコモリ漂流記』。

 新潮社 1300円

読売新聞
2018年7月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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