『生物模倣』 アミーナ・カーン著

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生物模倣

『生物模倣』

著者
アミーナ・カーン [著]/松浦俊輔 [訳]
出版社
作品社
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784861826917
発売日
2018/05/10
価格
2,808円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『生物模倣』 アミーナ・カーン著

[レビュアー] 塚谷裕一(植物学者・東京大教授)

 生物模倣とは、生物の特殊な機能や構造を解明し、それを人工物に応用しようとする試みのことである。

 有名なのは、衣服に絡みつく果実をヒントに作られた「マジックテープ」や、モルフォ蝶(ちょう)の翅(はね)のメタリックな構造色をヒントにした表面加工、蓮(はす)の葉が濡(ぬ)れない仕組みを利用した撥水(はっすい)加工などだ。

 ただ、これらはあまりに繰り返し紹介されてきたため、もう読み飽きた感がある。本書はその点、まだ現在研究中の現場を中心に取材してまとめているため、内容に新鮮さがある。研究の面白さと醍醐味(だいごみ)も、よく伝えていると言えよう。特筆すべきは、仕組みの解明も応用も簡単ではなく、まだ先は長いという現実を、ありのままに記している点だ。近年随所で賞賛されている、シロアリの塚をヒントにしたという省エネ空調も、実はシロアリの塚とは仕組みが全く異なっているらしい。

 ただし最先端の現場の取材につきまとう点として、取材から数年経(た)って古くなった点も散見されること、また訳が堅くて一読では意味が通じにくい箇所もあるところが、惜しまれる。松浦俊輔訳。

 作品社、2600円

読売新聞
2018年7月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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