人の気持ちはわからなくて当然。「無意識」を使いこなせば、対人関係はつらくなくなる?

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「気にしすぎてうまくいかない」がなくなる本

『「気にしすぎてうまくいかない」がなくなる本』

著者
大嶋信頼 [著]
出版社
あさ出版
ISBN
9784866670577
発売日
2018/05/26
価格
1,540円(税込)

人の気持ちはわからなくて当然。「無意識」を使いこなせば、対人関係はつらくなくなる?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「まわりの目を気にしてしまう」

「知らない人と話すと緊張してうまく話せない」

「先のことばかりが気になって、前に進めない」

たとえばこうした思いは、おそらく「気にしすぎ」だから感じること。けれど、「気にしすぎる」というのは、「意識」が活発に働いている状態。そう指摘するのは、心理カウンセラーである『「気にしすぎてうまくいかない」がなくなる本』(大嶋信頼著、あさ出版)の著者です。

人は、意識しすぎると、いろんなことに不安になったり、怒ったりします。すると、脳の緊張がどんどん高まり、意識が暴走しはじめます。そして、最終的に意識が想像した不幸が現実になってしまう…。 これが「気にしすぎてうまくいかない」原因です。 (「プロローグ」より)

そこで本書では、「意識」と「無意識」についてのエピソードを紹介しつつ、対人関係や仕事、日常などのシーンで「無意識」を使えるようになる方法を紹介しているのだそうです。

それは、私がそうだったように、「気にしすぎる人たち」が、無意識の力で少しでもラクに生きていけるようになってほしいからです。 無意識は、私の周りにあった、たくさんの「うまくいかないこと」をきれいに消し去ってくれました。それをみなさんにも体験してみてほしいのです。(「プロローグ」より)

そんな本書の第3章「『無意識』を味方にすれば人づきあいがラクになる」から、いくつかの要点を抜き出してみましょう。

マイナスな口調をやめると不安が消えてなくなる

誰かと一緒にいて、不安や緊張を感じたときに「意識」が働いてしまうと、「この人とは合わないから緊張している」「相手から生意気だと思われているから不安になる」などと原因を考えてしまいがち。

そして、そんなときには、つい会話の前置きとして「たいしたことじゃないんですが」とか、「どちらでもいいのですが」というようなことを言ってしまったりするものでもあります。

著者によれば、「意識」が「この人とは合わない」という方向に動いてしまうのは、「価値観が自分とは違う」と判断してしまうから。そうしたニュアンスが言葉として出てしまうと、相手に「たいしたことがないんだったら喋るなよ」「どちらでもいいんだったら言ってくるなよ」と露骨に嫌な顔をされるため、「やっぱりこの人とは合わない」という不安が自分のなかで増幅されてしまうというのです。

それは、自分のなかの「意識」が不安に思った方向に導くため、言葉に口癖のような前置きをつけさせてしまうということ。しかし、逆に自分が使う口癖に注目すると、「意識がつくり出したい現実はどんなものか」ということが見えてくるのだといいます。

たとえば「あなたにはわからないかもしれませんが」とか「ちょっと難しいかもしれませんが」というような口癖は、「自分は誰からも理解されない」という現実をつくり出してしまうもの。意識が「誰からも理解されず、自分がどんどん孤立してしまう」という不安を増幅させるため、「孤立する」という現実がつくり出されていくというのです。

また、「ちょっとまどろっこしいかもしれませんが」「説明しにくいのですが」という口癖を使っている場合、意識は「自分は人から誤解されて嫌われる」という現実をつくり出そうとしているときだったりもするのだとか。

でも「無意識」を味方につけると、「あの口癖って本当は不安な現実をつくり出していたんだ」ということに気づくもの。

勉強に集中したい時に、自分の中で「集中、集中」とつぶやいたことってないでしょうか? それと同じように、相手と話をする前に「無意識、無意識」と自分の中でつぶやいてみてください。すると「無意識」がちゃんと味方についてくれて、「あれ? 口癖は必要ないかも?」と思えてきて、ストレートに要点を相手に伝えられるようになっていきます。「無意識」を味方につけてみると、意識が不安な現実を作り出すことがなくなって、何事もスムーズな展開になります。(80ページより)

その結果、「いままでの大変さはなんだったんだ?」と痛感するくらい、口癖によって面倒な現実がつくり出されていたことが見えてくるというのです。(78ページより)

「人の気持ちはわからない」のが当たり前

相手のちょっとした態度によって「意識」が働いて、「あ、この人は私のことを下に見ているな」と気づいてしまったりすることがあります。すると、「馬鹿にされて蔑まれるかも」「自分だけ仲間外れにされるかも」などと不安になっていくかもしれません。

さらに、不安になればなるほど「意識」が働くため、いらない前置き(口癖)などをつけて、不安に思っていることを現実にしてしまうことに。さらに意識は、馬鹿にされて仲間外れにされるようなことが現実に起こっているように錯覚させるのだともいいます。

著者自身、「なんで相手からの評価を気にしてしまうのだろう?」と、ずっと悩んできたのだそうです。しかし、あるとき気づいたのは、「『相手の気持ちがわかる』と思っているから、相手の評価が気になるのかもしれない」ということ。そして、「自分の気持ちすらわからないのに、相手の気持ちなんてわかるわけがないよな」と思ったら、人からの評価が気にならなくなったのだといいます。

「人の気持ちはわからないんだ」となった時、意識は働かなくなり、無意識が味方になってくれるので、「もう、自分を作らなくてもいいんだ」と人前で役割を演じることがなくなります。 その役割こそが「馬鹿にされる」とか「見下されて邪険にされる」という現実を作り出し、余計に「人からの評価が気になる」という状態にしている元凶なのです。「人の気持ちはわからない」と無意識を味方につけたら、演じる必要がなくなります。(85ページより)

人のために演じる必要がなくなると、「自分ってどんな人だろう?」と考えてみるのが楽しくなると著者は言います。その結果、「自分って意外とマイペースでお気楽な人なのかも」「本当は『かっこよく生きたい』と思っている人なのかも」というようなことが、少しずつ見えてくるというのです。

つまり人の評価が気にならなくなると、自分のなかからいろんな可能性が見えてくるということ。(82ページより)

自分の意識を疑う

そればかりでなく、無意識は自分の長所を見つけ出してくれたりもするもの。たとえば著者は仕事で計算をしているとき、「あの人から間違いをまた指摘される」と考えると意識が働き出し「私はやっぱり計算が苦手」と考えてしまっていたのだといいます。

しかし「人の気持ちはわからない」と自分に言い聞かせた結果、相手からの評価が気にならなくなり、スラスラと計算ができるようになり、「もしかしたら自分の計算能力は高いのかも」と思えて楽しくなってきたというのです。

そればかりか、計算がちゃんと合っているか確認することにすら、ワクワクできるようになったのだともいいます。そして、「ノーミスでできているな」と確認できたら、今度は計算がどんどん好きになっていき、最終的に「計算が得意だったんだ」という自分の長所を発見したというのです。

「人の気持ちはわからない」と唱えて無意識を味方につけてみると、無意識はさまざまな長所と自分の中にある可能性を見せてくれます。(87ページより)

「自分は本を読むのが苦手」だと思っている人がいたとしましょう。その人は家で本を読んでいたら、パートナーから「ちゃんと内容を理解しているの?」とよく言われていました。しかし、言われるたびに「えーと…」と詰まってしまうため、「自分はちゃんと内容が把握できていないんだ」と落ち込み、それが「本を読むのが苦手」という思いにつながっていったというのです。

「そんな本を読んだって、なんのためにもなっていないじゃない」と相手が思っているとわかったときから「意識」が働き、その「意識」が「内容が頭に入ってこない」という現実を自らつくり出すということ。

しかし、「無意識」を味方につけ、「相手の気持ちはわからない」と唱えると、あいてのことを気にせずに本を読むことができ、それが「読んでいて楽しい」という思いにつながっていくという考え方です。(86ページより)

ここに書かれていることは、これまでの心理学の定義や科学的な根拠からはかなり外れているかもしれない。著者はそう記しています。しかし、それは「『常識』という意識的な枠組みを取り払って考えさせてくれたり、実行したりするのが『無意識』だから」だというのです。そんな無意識の力を実感してみるために、読んでみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年7月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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