桜川東子からのメッセージ――『銀幕のメッセージ』著者新刊エッセイ 鯨統一郎

エッセイ

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銀幕のメッセージ

『銀幕のメッセージ』

著者
鯨, 統一郎
出版社
光文社
ISBN
9784334912307
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

桜川東子からのメッセージ

[レビュアー] 鯨統一郎(作家)

 二〇〇一年に刊行された『九つの殺人メルヘン』(カッパ・ノベルス)から始まった桜川東子(さくらがわはるこ)短編シリーズが終了する。

 予(あらかじ)め、そう決められたシリーズだったのである。

 今回の新刊『銀幕のメッセージ』がシリーズ七巻目となるが、あと二巻、シリーズはスター・ウォーズと同じく全九巻で幕を閉じる。

 なぜか――。

 シリーズ第一巻から収録作品数によってカウントダウンしていたからである。第一巻(といっても一話完結なので、どの巻から読んでもOK)が九話収録、第二巻が八話収録、第三巻が七話……。そして巻を重ねるごとに収録作品数が一話ずつ減ってゆき今回の最新刊が三話収録となっている。つまり次作が二話収録、次々作が一話となり最終巻となるのだ。

 今作はタイトルからも判るように映画についての思い出などをバーであれこれと語っている。

 作中では言及できなかったが私の好きな映画の一つに一九八四年公開、ダイアン・レインがヒロインを務めた『ストリート・オブ・ファイヤー』がある。今年の七月にデジタルリマスター版で再公開されるので観にゆこうと思っている。

 同じく作中で言及できなかったけれど好きな映画に斎藤耕一(さいとうこういち)監督の『めまい』がある。一九七一年に公開されたこの作品は辺見(へんみ)マリ主演の歌謡映画である。この作品には『水色の恋』で歌手デビューする前の天地真理(あまちまり)が斎藤(さいとう)マリ名義で出演している他、キャンディーズ結成前の田中好子(たなかよしこ)、伊藤蘭(いとうらん)、藤村美樹(ふじむらみき)がスクールメイツの一員としてダンスを披露している。

 残念なことにソフト化されていないので劇場公開される機会に観るしかない。

 このような映画の話が満載の今作だが、実は殺人事件を扱うミステリ小説であることは、あまり知られていない。

光文社 小説宝石
2018年8月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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