「普通の仕事」をほんの少し超えるために必要なのは「レベル11」を目指すこと

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だから、また行きたくなる。

『だから、また行きたくなる。』

著者
川田 修 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784478068434
発売日
2018/07/06
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「普通の仕事」をほんの少し超えるために必要なのは「レベル11」を目指すこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

だから、また行きたくなる。 伝説の外資系トップ営業が教える「選ばれるサービス」の本質』(川田 修著、ダイヤモンド社)の著者は、プルデンシャル生命保険株式会社エグゼクティブ・ライフプランナー。同社においては営業職の最高峰であるエグゼクティブ・ライフプランナーに昇格し、その年の年間営業成績(2001年度の社長杯)トップに。全国約2000人中1位のPT(President’s Trophy)を達成したという実績の持ち主です。

これまでに1000人以上の経営者と出会い、約800社の企業を見てきたのだとか。そんななかで気づいたのは、伸びている会社、繁盛しているお店、売れている商品には共通点があるということ。そして、それは著者自身が営業現場で大切にしていることと一緒だったのだそうです。

それは、

ほんの少しだけ違う「何か」を提供して、お客さまの心を動かすこと。 (「はじめに」より)

そこで、「なぜそれが大切なのか」を解説しているのが本書だということ。多くの事例を紹介しつつ、どんなお店や会社にも共通する「リピート」や「紹介」を生み出す秘訣を明かしているわけです。きょうはそのなかから、第2章「『普通の仕事』をほんの少し超える方法――「レベル10」「レベル11」という考え方」に注目してみたいと思います。

お客さまの頭のなかには「普通」の基準がある

著者の頭のなかには、常に「レベル10」「レベル11」という考え方があるのだそうです。

レベル10とは、その職業における一般的な水準。つまり、お客さまが「普通だな」と感じるサービスのこと。重要なのは、この「普通だな」という感覚が、大多数の人の頭のなかに共通認識としてあるという点です。

そしてレベル11とは、お客さまの頭のなかにあるレベル10を、ほんの少しだけ上回ること。頭のなかに「普通はこういうもの」というレベル10の感覚があるために、お客さまはほんの少しの違いでも敏感に感じ取るというのです。

著者は営業に限らず、すべての職業にこのレベル10とレベル11があると考えているそうです。

そこで、あなたの中にもレベル10の感覚があるということを体験してもらいたいと思います。

家電量販店に、スマートフォンを買いに行くときのことを想像してみてください。 あなたはお客さまです。 重要なのは、顧客目線になって考えるということです。 商品を見ていると、店員さんに声をかけられました。

「スマートフォンをお求めですか?」

さて、ここから4つの質問に答えてみてください。 (57ページより)

Image: ダイヤモンド社
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著者が講演などで「質問1」を問いかけると、ほとんどの人が「(2)自分でアイロンをかけたくらいの、もしくは少しヨレッとしたシャツを着ていることがある」に手を挙げるそうです。

「質問2」については多くの方が「(1)商品知識は豊富」に挙手し、「質問3」に対しては、「(2)少し体勢を崩した、リラックスした感じで説明してくれる」に手を挙げるといいます。

すでに、不思議なことが起こっていると著者は指摘しています。みんなが同じお店の、同じ店員さんに、接客を受けたわけでもないのに、多くの人が同じイメージを抱いているわけです。

ちなみにこのイメージは、実は業種によって違うのだといいます。そこで、業種を変えて同じ質問をしてみることにしましょう。

Image: ダイヤモンド社
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さて、先ほどの店員さんと同じイメージだったでしょうか? おそらく(1)と答えた方が多いはず。そこで著者は、「質問4」に(1)と答えた人に対して、「実際に、リッツカールトン大阪」に行ったことがある人?」と問いかるのだそうです。すると、ほとんどの人が沈黙することに。つまり、行ったこともなければ見たこともないのに、(1)にサッと手を挙げるということ。

この話のポイントは、著者自身がリッツカールトン大阪に行ったことがなく、実際にドアマンがいるのかどうかも知らないで質問している点。それでも、話を聞いている人たちのなかにも、著者のなかにも、同じ「レベル10」があるわけです。

「この職業の人は、こういう感じ」と、多くの人々が、さまざまな職業に対して無意識のうちに「ある特定のイメージ」を抱いているのです。お客さまはいつも、こちらに対して「この仕事は、これが普通」と、期待の基準値を頭のなかに持ちながら目の前にいるということ。つまりはこれがレベル10だというわけです。(56ページより)

「普通」をほんの少し超えるだけで、心は動く

先にも触れたとおり、お客様の頭のなかにある「レベル10」をほんの少しだけ上回ること、それが「レベル11」。頭のなかにレベル10の強い認識があるために、ほんの少しの違いを、お客さまは敏感に感じ取るわけです。

さて、ここで著者は、「シャツは少しヨレッとしていて、少し姿勢も崩れ気味、でも商品知識は豊富」な、あの家電量販店のことに話題を戻しています。ひとつのエピソードを引き合いに出しながら。少し長いのですが、大切なことなので引用してみることにしましょう。

あなたはお望みの商品を選び、店員さんはあたなを連れてレジ担当にバトンタッチします。通常はそれで、その店員さんとの接点は終わりですよね。 ところが。お会計を済ませて、お店を出ていこうとすると…「○○様!」 と、どこからともなく、あなたを呼ぶ声がします。 振り返ると、さっきの店員さんが小走りにやってきて、こんなふうに言うのです。

「本日は、数多くあるお店の中から当店をお選びいただき、誠にありがとうございました。○○様にご縁をいただき、私△△が接客させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。また、何かご入用の際は、当店に足を運んでいただいて、○○様とご縁をいただけますと幸いです。本日はまことにありがとうございました」

そして、それはそれはていねいに、お辞儀をするのです。 お店を出てから振り返ると、深々と頭を下げて、あなたが帰るのを見送っています。 「やけにていねいな店員さんだなあ」 そんな気持ちでお店をあとにすると、ふと、あることに気づくのです。

「あれ? あの店員さん、なんで自分のことを名前で呼んだんだろう?」

接客してもらっているときに名乗った覚えはありません。

「そうか! あの店員さんは、私を気にかけるだけでなく、レジに寄ってカードのサインや領収証から私の名前を確認して、それで最後に名前で呼んだんだ!」

そんなことに気づくと、私なら、その日会社に戻って、後輩に「今日、こんなことがあってさあ!」と話したくなってしまいます。 これって、「紹介している」ということです。 次、何か必要なものが出たときに、つい、その店員さんの顔が浮かんでしまいます。 これって、「リピートしようとしている」ということです。 (65ページより)

この店員さんは、レジ担当にバトンタッチしたあとも気を抜かず、帰り際にていねいに感謝を表現した。いままで接してきた店員さんとは、ほんの少しだけ「なにか」が違っていた。たったそれだけのことですが、「普通」をちょっと超えたことをするだけで、お客さまの心を動かしたわけです。

これが「レベル11」。この少しの違いが、お客さまに小さな感動を提供し、やがては大きな差を生んでいくということ。営業の仕事においても、トップ営業とほかの営業は、なにかが大きく違うわけではないと著者は言います。「レベル10」と「レベル11」の違いがあるだけ。でも、その「1」の違いが、とても起きなさになってくるという考え方です。(64ページより)

本書は、経営者や現場の責任者(管理職)の人たち、そして現場でお客さまに接している人たちの双方に読んでもらうことで、最大限の価値を生み出せるようになっているのだそうです。なぜなら、経営者、管理職、現場の人たちが同じ方向を向いていなければ、「紹介」や「リピート」は生まれないから。つまりは、現場から経営者までが「価値を共有」し、「同じ方向を向く」ことが大切だということ。

そういう意味で、すべてのビジネスパーソンが読むべき1冊だと言えそうです。

Image: ダイヤモンド社

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年7月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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