幼い頃の記憶を巡る重厚ミステリ 『骨を弔う』宇佐美まこと

レビュー

8
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骨を弔う

『骨を弔う』

著者
宇佐美 まこと [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784093864985
発売日
2018/06/28
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

幼い頃の記憶を巡る重厚ミステリ

[レビュアー] 西上心太(文芸評論家)

 故郷の川の増水で堤防が崩れ、ばらばらの白骨が発見されたが、正体は理科教材の標本だった。その新聞記事が本田豊の記憶を刺激する。三十年前の小学校五年の夏休み。四国の田舎町の集落に住む同い年の五人は、骨格標本をそれぞれリュックに隠し、確かにそれを埋めた。だがその場所は山の中だった。では自分たちが埋めたのは、本物の白骨だったのではないか……。

 いまも故郷近くに住む豊は、ばらばらになった幼なじみを訪ね歩き、その疑問をぶつけていく。東京在住で広告代理店に勤める大澤哲平、地元の県会議員の妻になった水野京香、東北で民宿を営んでいた田口正一。山口に嫁いだ優しいお姉さんだった琴美。だが京香の口から、グループの中心だった佐藤真実子が若くして亡くなっていたことを聞く。真実子は理科室から標本を盗み、夏休みになってから皆に埋葬を命じた張本人だった。三十年前のあの時、いったいなにが起きていたのか。

 豊と語り合ううちに、幼なじみたちは忘れていた記憶を思い出し、子供時代にはわからなかった「事情」を忖度していく。優しかった老夫婦の人格の変化、異臭騒ぎ、殺人の告白、失踪……。

 そして輝いていた子供時代と「今」を比べ、それぞれの現況と向き合い始める。同棲相手との将来、夫の暴力と舅夫婦の無神経な言動、大震災による家族の死。そして巡礼者である豊自身も、心の奥に納めていた秘密を見つめ直す。

 こうして過ぎ去ったはずの過去の行いが、現在にまで手を伸ばし、意外な真相が導かれるのだが、その過程のどんでん返しのつるべ打ちが衝撃的。謎解きの鮮やかさと同時に、登場人物たちの人生の意義も浮かび上がる、忘れがたい作品となった。

光文社 小説宝石
2018年8月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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