「特定社労士」が明かす、会社でのトラブル対応策

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「特定社労士」が明かす、会社でのトラブル対応策

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

9割の会社はバカ:社長があなたに知られたくない「サラリーマン護身術」』(石原壮一郎、三矢晃子著、飛鳥新社)とは大胆なタイトルですが、著者は決して「会社」にケンカを売りたいわけではないのだそうです。それどころか本書の目的は、働く側と会社がお互いにとって、もっといい関係を築くことだといいます。

あなたは、今の「働き方」や今の「会社」に満足していますか。きっとそれぞれに、それなりの不満や悩みがあることでしょう。 不満や悩みがあるのは、あなたが贅沢を言っているからでも能力が不足しているからでもありません。大きな理由は「9割の会社はバカ」だからです。 人生において「会社」でどう働くかは、極めて大きなテーマ。たとえ「会社」に所属していなくても、さまざまな「会社」と繋がりを持たないと仕事はできません。だからこそ、「会社」とはどういう存在なのか、「会社」とどう付き合えばいいのか、ちゃんと考えておく必要があります。(「はじめに」より)

こう主張する著者は、「大人力」という言葉の生みの親であるコラムニスト。つまり「会社はバカ」という言葉も、そうしたワードセンスが生み出したものだということです。そして、重要なポイントがもうひとつ。そのことについても、著者の言葉を引用してみましょう。

さまざまな苦難を乗り越えつつ、当たり前の気持ちを持って働くためには何が必要か。それは「正しい知識」と「大人の知恵」です。 この本の最大の特徴であり自信を持ってオススメできる点は、取り上げたすべてのシチュエーションについて、労働問題のプロである「特定社労士」が、専門的な立場からアドバイスをしていること。経験豊富な特定社労士の三矢晃子さんが、苦難を乗り越えるために必要な「正しい知識」を伝授し、さらに愛情たっぷりで歯切れのいい励ましや時には叱咤で、やる気と勇気を引き出してくれます。(「はじめに」より)

Part 1「御社の『理不尽』、こうして解決できます」から、いくつかを抜き出してみたいと思います。

上司に裏切られた

Q:上司の意向を忖度してグレーな行為に手を染めたが、問題化したとたんにハシゴを外された。

上司に「どうすればいいか、わかってるな」と言われ、意向を忖度してグレーな行為に手を染めた。ところが、そのことが明るみに出て大問題に。その途端、上司は「なんてことをしてくれたんだ。責任を取れ!」と思い処分を課そうとしてきた。どうすればいい?(16ページより)

A:本当に責任を取れるのは社長だけ。まずは周りを味方につけよう。(18ページより)

「グレーな行為に手を染めたのは問題だけれど、“実行犯”の自分が責任をとらなければいけないのでしょうか?」という問いに対し、著者は「そんなわけがありません」とはっきり答えています。

そもそも会社の不祥事の責任を取ることができ、対外的に頭を下げる必要があるのは代表取締役社長のみ。減給や降格はあっても、クビなどの重い処分を課せられる筋合いはないというのです。

とはいえタチの悪い上司だと、あくまで「こいつが勝手にやった」と言い張るかもしれないし、会社もその上司の口車に乗せられてしまうかも。だからこそ大切なのは、まず周囲を味方につけること。

会社が怖くて誰も味方してくれそうになかったら、社内や社外の組合に相談して話し合いを求めたり、要望書を提出したりするのが有効だといいます。

会社生活でもっとも怖くて危険なのは「孤立」なので、日ごろから円滑な人間関係を維持する努力を怠らないことが、自身の身を守る最大のリスクヘッジだという考え方。ピンチのときに「この人の味方をしてあげたい」「有利な証言をしたい」という人がどれだけいるかが、大きなポイントになるということ。

忖度にせよはっきりした指示にせよ、上司がグレーな業務や違法な業務を要求してきたら、きっぱり断りましょう。何かあったらすぐにハシゴを外されるなど、リスクやデメリットのほうが何倍も大きい。まったく割に合いません。(20ページより)

まともな会社であったら、下っ端だけに責任を押しつけたりはしないということです。(16ページより)

残業が多すぎる

Q:サービス残業の多さに我慢できない。労基署にチクりたいが、自分が言ったとバレないようにするには? 月100時間以上の残業がもう半年も続いている。ほとんどがサービス残業だ。上司にいくら訴えても、まったく改善されない。もう我慢の限界なので労働基準監督署にチクろうと思うが、自分が言ったとバレるのは困る。いい方法はないだろうか?(22ページより)

A:バレる心配をしなくても大丈夫。(24ページより)

著者によれば、労働基準監督署は、証拠をそろえて持っていけばちゃんと動いてくれるそうです。過重労働問題は、労働行政が特に力を入れている分野。月100時間の残業は、会社が労基署に届けている「36(サブロク)協定」(時間外・休日労働に関する協定届)の上限を超えているはずだといいます。

そこで、タイムカードや実際に働いた時間がわかるメモ、仕事していたことがわかるメールなどを持って最寄りの労基署に行き、「サービス残業に関しての申告で来ました」と宣言するのがいいといいます。なお、労基署に申告するための書式に決まりはなし。状況を簡潔にまとめた文章を作成して提出すればOKだそうです。

ちなみに労基署には守秘義務があるので、申告者が匿名を望めば名前は絶対に明かさないもの。ただし労基署から調査が入ったりした場合は、会社内で犯人探しがはじまる可能性は否定できないでしょう。とはいえ上司から「君じゃないよね?」などとカマをかけられたとしても、他の社員にも同じことを聞いているはず。気にすることはないそうです。

ただし最終的に残業代を請求するなど、個人の救済を求めるのであれば、当然のことながら名前は明らかになることに。(22ページより)

パワハラへの対応策

Q:上司のパワハラがあまりにひどい。いっそ辞めてしまおうか…(40ページより)

上司のパワハラに苦しんでいる。「死んじまえ!」といった言葉の暴力は当たり前。時には床に正座させられるなどの制裁もある。会社は嫌いではないが、もう限界だ。どうすればいいか。(41ページより)

A:いつ辞めてもかまわないと思った瞬間、力関係は逆転する!(42ページより)

現実問題として、上司の理不尽な仕打ちに日々苦しんでいる人は少なくないはず。この案件の場合、会社は嫌いではないということは、会社の体質ではなく、その上司がひどいということになるでしょう。

そんな状態では辞めることしか考えられないかもしれませんが、「上司はそのうち代わる」ということは頭の隅に置いておくべきだと著者は言います。少なくとも、イヤな上司のために自分が犠牲になることはないわけです。

なお避けたいのは、上司を徹底的に挑発し、わざと暴力をふるわせて警察に訴えること。うまくいかないでしょうし、仮にうまくいっても、もみ消そうとする会社と戦うことになったり、期待どおりに動いてくれない警察にイライラしたり、無駄に消耗するだけで得るものは少ないというのです。

それよりも重要なのは、会社を辞める気があるのだったら、実はなにも怖いものはないのだということに気づくこと。だから辞める気があるのなら、開きなおってその上司に立ち向かってみるという手もあるわけです。

そこで暴言を吐かれたら、「いまの言葉は撤回してください」と冷静に返し、納得できない場合はとことん説明を求めることが大切。上司の発言を録音したり、なにをやったかを記録したりして、会社の上層部や公的機関に伝えるのも有効な戦い方だといいます。

パワハラは、されている側の冷静な判断力を奪ってしまうもの。パワハラを直接裁く法律はないものの、いったん落ち着いて「自分にとって大切なものはなにか」を考え、それを守るための行動を起こすことが大切だという考え方です。

Q&A形式で、しかも会話するように解説されていくため、とてもわかりやすい内容。どこからでも読むことができるため、直近の問題点を解決したいという人には大きく役立ちそうです。働き方や会社との関係をよりよくするために、読んでみてはいかがでしょうか。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年7月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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