『面従腹背』
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「忖度」から「面従腹背」へ 前文科事務次官の“真相”告白録
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
「忖度(そんたく)」という言葉が流行語になりました。政治家や官邸筋から少し匂わされただけで、一を聞いて十を知るのたとえ通り、役人が「然るべく」動くことです。政治主導、安倍一強となって以来、役人も出世したいわけですから、そうせざるを得ないのはよく分かります。
それだけに問題が森友から加計に移った時、著者が「あったことをなかったことにはできない」と言ったのは、鮮烈であり衝撃でした。そして次に本書のタイトルとなった「面従腹背」という言葉が出てくるわけです。
著者はそれを「政治的な圧力に対して『面従』しつつ、教育の本質を失うまいと『腹背』する文部科学省の姿」と定義していますが、著者がいきなりそうなったわけではないことが本書を読むとよく分かります。
元愛媛県知事の加戸守行氏は、かつて著者の上司でした。氏が部下である著者に何を命じたか? いやここは大変面白く読みました。後年、国会でまったく逆の立場で対決することになるのですが、なるほどこれは水と油だと大いに納得するのです。
著者は官僚トップの次官にまで上り詰めましたが、天下り問題で辞任します。潔く辞めたのに菅官房長官は「地位に恋々とした」と攻撃、前後して読売新聞が、著者が出会い系の店に通ったと報じ、著者は「記事が出たときは非常に驚きました。でも、逆に言うと記事が出たことで吹っ切れた面もあります。これでもう(中略)官邸に対する忖度はしなくていいんだと」、逆襲の記者会見を開くのです。
人は物事をどんどん忘れ、印象深いことしか覚えていないものです。著者を天下りで辞めた人としか認識しない人もいますが、そういう人は加戸氏をリクルート事件に連座して辞めた人とは言いません。
モリカケ問題は未だ先が見えません。私などは昭恵夫人と加計理事長が国会に出てくれば即解決と思うのですが、皆様のお考えや如何に?