『歴史の謎はインフラで解ける 教養としての土木学』

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『歴史の謎はインフラで解ける 教養としての土木学』

[レビュアー] 産経新聞社

■公共事業は「無駄」ではない

 西日本豪雨災害によって、公共事業、土木、インフラの必要性が連日報道されている。しかし、日本は20年以上にわたり公共投資を削減し続けてきた。なぜか。

 「コンクリートから人へ」のスローガンに見られたような、「先進国に公共事業は無駄」という刷り込みによって緊縮財政が取られてきたからではないか。

 元国土交通省技監と内閣官房参与による本書を読めば、これが事実誤認であるとわかる。まず、先進国でも日本以外の国はインフラ投資を削減せず増加させている。

 また、本書は土木によるインフラ整備こそが経済を発展させるという事実をつまびらかにしている。インフラが、織田信長の天下統一や江戸時代初めの人口増、ローマ文明の起爆剤になったのだ。

 浜口梧陵(ごりょう)の「稲むらの火」、富山を救った「砂防」、治水などの逸話からは災害列島にとって土木がいかに重要かを知る。防災土木のあらゆる側面が詰まっているのが浜口の逸話。江戸時代の安政南海地震による津波の際、稲むらに火をつけて村人を救っただけでなく復興事業として私財で堤防を建造。約1世紀後の村人も津波から救った。「無駄」なわけがない。今こそ読みたい一冊だ。(大石久和、藤井聡編著/産経新聞出版・1500円+税)

産経新聞
2018年7月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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