カラオケスナック定番「韓国歌謡」その歴史をひもとく貴重な記録

レビュー

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韓国歌謡史I 1895-1945

『韓国歌謡史I 1895-1945』

著者
朴燦鎬 [著]
出版社
邑楽舎
ISBN
9784939139239
発売日
2018/07/20
価格
4,320円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

韓国歌謡史II 1895-1980

『韓国歌謡史II 1895-1980』

著者
朴燦鎬 [著]
出版社
邑楽舎
ISBN
9784939139246
発売日
2018/07/20
価格
4,320円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

カラオケスナック定番「韓国歌謡」その歴史をひもとく貴重な記録

[レビュアー] 都築響一(編集者)

『釜山(プサン)港へ帰れ』から『大田(テジョン)ブルース』まで、ほとんど意識せずに毎夜カラオケスナックで絶唱される韓国歌謡は少なくない。チョー・ヨンピルに桂銀淑、キム・ヨンジャ、チェウニ……韓国人歌手の歌声も、日本の夜にすっかり溶け込んでいる。

 1987年に晶文社から出た『韓国歌謡史』は、19世紀末から1945年、日本統治終焉までの韓国大衆音楽をひもといた歴史的名著であるにもかかわらず、ながく絶版のままだった。それがこのたび完全復刻、さらに45年から80年代、つまりK-POP登場以前までの歌謡史をおさえた続編とあわせて、総計800ページを超す大著として刊行された。著者の朴(パク)燦鎬(チャンホ)さんは名古屋生まれの在日二世。調査のための渡韓もままならない時代があり、戦前の日本文化に影響された歌謡曲が「倭色(ウェセク)歌謡」として排斥されてきた歴史があり……多くの困難を乗り越えてこれほどの大著がこの時代に、世に出たことにまず感動する。

 さっと読み流せるような本ではないので、いま45年から80年までを扱った『韓国歌謡史II』のほうから、ネットで音源も探したりしつつ、ゆっくり楽しませてもらっているが、日本の戦後歌謡が進駐軍キャンプから始まったように、韓国歌謡でも朝鮮戦争で駐留したアメリカ第8軍が決定的な影響を及ぼしたし、カントリー&ウェスタンからフォーク、ロックへの流れは、日劇ウェスタンカーニバルからグループサウンズ、フォークソングへという日本歌謡曲の変遷そのまま。読み進めながら、海峡を越え、国境を越えて拡散していく音楽のちからを、あらためて教えられもした。

 おもだった曲に和訳歌詞がつけられているのが、理解を助けてくれるし、SPからLP時代になって登場するレコードジャケットの写真も、水割り感というか、歌謡ムードを盛り上げてくれる。そしてII巻末に付された在日芸能界の考察も非常に興味深かった。

新潮社 週刊新潮
2018年8月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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