ウジウジしてしまう自分を「ゴキゲン」な状態にするための方法

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ウジウジしてしまう自分を「ゴキゲン」な状態にするための方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

些細なことでウジウジしてしまったり、イライラしてしまうことは誰にでもあるもの。しかしそんなときは、なんらかのきっかけがないと悪循環から抜け出せなかったりもします。そこでオススメしたいのが、『先生、ウジウジ・イライラから一瞬で立ち直る方法を教えてください!』(辻 秀一著、朝日新聞出版)です。

著者は、一流スポーツ選手やトップビジネスパーソンに熱い支持を受けているスポーツドクター。個人や組織のパフォーマンスを最適・最大化する心の状態「Flow」を生みだすための独自理論「辻メソッド」によって、メンタルトレーニングを展開しているのだそうです。

2000年に37万部突破のベストセラー『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)を生み出した人だと聞けば、ピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。そして、そのようなキャリアをベースに、「ごきげんに生きるための脳のスキル」を紹介したのが本書。

私が専門にしている「心を整える脳のトレーニング」を受けている人は、たくさんいらっしゃいます。(中略)本書は、私の課題でもあり多くの人がぶつかる共通の壁をわかりやすく表現し、解決していくプロセスをまとめています。本書が手元にあれば、私の個別セッションを受けなくても十分にイライラやウジウジから機嫌のよい心の状態に整えることができること間違いなしです。(「おわりに」より)

すぐにウジウジ、イライラ、クヨクヨしてしまうことに悩んでいる主人公(28歳・会社員)と著者との会話形式で話が進んでいくため、無理なく読み進められる点も魅力。きょうは第1章「先生、どうしたらもっと気分よく生きられますか?」の中から、いくつかのトピックスを引き出してみたいと思います。

ちょっとしたことで、ウジウジ、イライラしてしまうんです

朝の出勤時から電車が遅れてウジウジ、そのせいで車内が混んでイライラ、体がぶつかった人から舌打ちされてクヨクヨ、遅刻してまたウジウジ…と、主人公は著者に悩みを打ち明けます。「本当は、もっと気分よく生きられたらいいのに」と。

それに対する著者の答えは、「そんなことで感情を振り回されるなんて、“人生、残念すぎる”。たびたびそんな状態に自分を追い込んでいたのでは、大変で当然だということです。

「人には感情がある。外からの刺激によって、明るい感情が起こることもあれば、暗い感情が起こることもある。当たり前だよね。だけど、その感情がいつまでも他人や出来事――つまり自分の外側にあるものによって決められ続けてしまうなんて、おもしろくないと思わないかい?」(11ページより)

つまり、もっと気分よく生きたいのであれば、外側のことに自分の心を振り回されず、自分で自分の心を決めることが大事だということ。たとえば、本来であれば電車が遅れたことと、自分の心は関係ないはず。「電車が遅れたから遅刻した」ということは成り立つものの、「電車が遅れたからウジウジしている」という考えは成立する余地もないということです。

なぜなら、自分の心は自分のものであって、外側のものに左右されるべきではないから。感情は外側からの刺激によって起こるけれども、それによって心を惑わされ続ける必要はないということ。つまりそれが、「外側のことで自分の心を決められ続けない」ということだというのです。

それから、この件についていちばん残念なのは、自分でできることをしないで、結果にウジウジすることだと著者は指摘しています。準備不足だったり、時間を見誤ったりして遅刻したのだったら、それは誰のせいでもなく自分のせい。

なのにそれを「ウジウジしている理由」としたなら、それこそくだらない「言い訳」にすぎない。ウジウジしている暇があったら、「次から自分がどうしたらいいか」を考えて行動するしかないということ。

もちろん、「ちゃんと間に合うように準備できなかった自分」に対する反省もあるでしょう。それでまた、ウジウジしてしまうという悪循環。しかし、ウジウジを引きずったところで、いいことはなにもないわけです。

さて、ここまでアドバイスしたのち、著者は主人公に対して「スポーツ心理学」の解説をします。

「スポーツでは、メンタルマネジメントがとても大事だと言われている。そこで自分の心を整えて、最高のパフォーマンスを発揮するための心理学が、スポーツ心理学です。つまり心理学のなかでも、スポーツ心理学は、きわめて『実用的な心理学』といえる」(15ページより)

スポーツ心理学は、欧米ではすでに当たり前のもの。ところが日本ではまだまだスポーツの位置づけが低く、スポーツ心理学が「生きるための実学」として誰にでも役立つということがほとんど知られていないというのです。つまり著者の仕事は、そんなスポーツ心理学を応用し、誰でも自分を「ゴキゲン」にできるようにすることなのだそうです。(10ページより)

僕がこんなに苦しいのは「自分のせい」なんでしょうか?

この項で著者は、「自分が苦しいのは、ぜんぶ自分のせいなのか」と思い悩む主人公に対し、その考え方については注意が必要だとアドバイスしています。

「他人を責める『他責』の反対は、何でも自分のせいにする自責ではない。いうなれば『自分の心は自分で決める。そういう生き方をすること』、そうして『目の前の人、そして自分に対する責任を果たしていくこと』ーーこれが本当の自責だと私は考えています『責』は『責』でも、『責める』ではなく、『責任を果たす』ということ」(20ページより)

自分の心を自分で決めると、まわりや自分に対する責任を果たすことができる。自分を責める必要はないということ。たとえば電車が遅れ、ウジウジしたとします。しかし、そのウジウジした心のままで人と会ったらどうなるでしょう? もしもそれが仕事の打ち合わせだったとしたら、いいアイデアなんかでないでしょうし、デートだったとしたら、彼女を楽しませることなんかできないはず。

しかし、そうできなかった自分を攻めても仕方がないわけです。大切なのは、いいアイデアが出せるよう、彼女を楽しませることができるよう、じぶんの心は自分で決めること。つまり、それが「目の前の人に対する責任を果たす」ということであるわけです。

そして、いいパフォーマンスをすれば当然のことながら、自分の人生がよりよい方向に動くことになります。そう考えると、自分の心を自分で決めることは、自分に対する責任を果たすことでもあるということがわかります。

著者は、ウジウジなどのネガティブな感情は、「足のつかない深い海」のようなものだと主張しています。たとえば別れた彼女のことを思い出してウジウジしてしまうとしたら、それはそれで仕方がないこと。しかし、そうはいってもウジウジの海で必死に泳ぎ続けたのでは疲れてしまうし、いずれは溺れ死んでしまうかも。

そのため、なんとかして陸地に這い上がらなければならないはず。難しそうにも思えますが、そもそもそのウジウジをつくりだしているのは自分なのですから、必ず自分の力で這い上がることができると著者は訴えています。

「大人は、自分の心を自分で決めることで、よりよい未来を作っていくことができる。赤ちゃんは、自分で自分の機嫌をとれないよね。だから、お母さんがあやしてくれるまで泣き続ける。自分の心を自分で決められない人は、そんな赤ちゃんと変わらないわけだ。名付けて『赤ちゃん症候群』ーー図体は立派な大人なのに、赤ちゃんのままでいいの? っていう話だね」(24ページより)

もちろん外側のことに反応し、大小さまざまな波が生じるのが感情というもの。つまり、「電車が遅れてウジウジ」「舌打ちされてクヨクヨ」「上司に意見が通らなくてイライラ」「別れた彼女を思い出してウジウジ」というような感情が生じるのも仕方がないこと。生じさせてはいけない、というものではないといいます。

しかし生じたら生じたで、すぐに自分で自分の心を決めることが重要だという考え方。だからこそ、さっと自分で心を整え、「いま、この瞬間」に臨む。それが目の前の人、そして自分自身に対する責任を果たすということだというわけです。著者は、それこそが「成熟した大人の条件」だと記しています。(17ページより)

主人公の心に寄り添って話を進める著者のアプローチは、多くの読者の心に届きやすいものでもあります。そのためリラックスしながら読んでみれば、気持ちを楽にできるヒントが見つかるかもしれません。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年8月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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