<東北の本棚>故郷の再生、自分たちで

レビュー

5
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「東北のハワイ」は、なぜV字回復したのか スパリゾートハワイアンズの奇跡

『「東北のハワイ」は、なぜV字回復したのか スパリゾートハワイアンズの奇跡』

著者
清水 一利 [著]
出版社
集英社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784087210255
発売日
2018/03/16
価格
778円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>故郷の再生、自分たちで

[レビュアー] 河北新報

 東日本大震災で被災、福島第1原発事故による風評被害で創業以来のダメージを受けた、いわき市の大型レジャー施設「スパリゾートハワイアンズ」。しかし翌年には震災前に近い業績を回復した。「なぜか?」を探った物語。「ふるさとの再生は、他人任せにせず自分たちの手で」の合言葉が、奇跡を呼び起こす原動力だった。
 2010年度の入場者数は約134万人だった。11年度は約37万人に減少、それが12年度には約141万人に回復している。
 スパリゾートハワイアンズのショーで踊りの舞台に立った「フラガール」、3.11で彼女たちも被災した。「練習を再開するから、来られたら来てね」とメールのやりとりから始まった。すると、29人全員集合。全国キャラバンを開始したのが震災から1カ月半後の5月3日だった。秋までに、公演が韓国・ソウルを含めて26都道府県、124カ所、245回に及んだ。福島の元気な姿を見てもらう。それは同時に風評被害との闘いでもあった。「危機に直面した故郷を目の当たりにして、今こそ自分たちが立ち上がらなくては、と思ったのだろう」と著者は分析する。全社員が同じ思いで取り組み、市民みんなが支援した。
 元は炭鉱の町だった。炭鉱産業が斜陽化し、観光業に脱却を図ろうと1966年に創業したのが前身の「常磐ハワイアンセンター」だ。物語は、炭鉱閉山の歴史から探る。解雇される従業員をハワイアンセンターの社員に雇用。館内のレストランや売店の品物は皆、地場の物を使用、さまざまな取引を申し入れてきた首都圏の大企業を一切排除した。フラガールたちも、地元の中学を卒業した娘たちだった。「みんな運命共同体。全て自前でやる」。震災復興を考える上で、その軌跡は大きな示唆を与えている。
 著者は1955年、千葉県市川市出身。PR会社勤務を経てフリーライターに。
 集英社03(3230)6080=778円。

河北新報
2018年8月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加