<東北の本棚>自己探求の思想を追う

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近代日本における私生活と政治 与謝野晶子と平塚らいてぅ

『近代日本における私生活と政治 与謝野晶子と平塚らいてぅ』

著者
小嶋 翔 [著]
出版社
東北大学出版会
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784861632877
発売日
2018/05/25
価格
3,456円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>自己探求の思想を追う

[レビュアー] 河北新報

 歌人・与謝野晶子と社会運動家・平塚らいてう(雷鳥)、個と国家の在り方を問い続け、自我の確立に格闘した2人の思想の軌跡を追う。
 2人は明治初期、日本が資本主義国家の道を歩み始めた時期に出生した。都市化が進み、大衆が出現する時代状況にあった。
 与謝野は幼い頃、親に本を読むことさえ許されなかった。歌集「みだれ髪」を発表。己の思った通りの行動を取る、強く生きるのを「自我」の高揚ととらえた。それまでの生活感を変えたのが夫を追って旅した欧州での体験だった。色や形、自分の好みに合わせて服を選ぶフランスの女性。開放的な教育を受け、英国の子どもたちは伸び伸び育っていた。大日本帝国とは関係なしに「私」が存在する。国家に無条件に従わない。生きるとは「経済的に精神的に個として独立すること」であった。
 平塚は高級官吏の娘として、家族の愛をいっぱいに受けて育った。しかし性格は非社交的。青年作家と心中未遂事件を起こすに至って、赤裸々な一人の女としての自分自身に向き合う。「元始、女性は太陽だった」と掲げた「青鞜」を創刊。本来の自己を封殺して仮面の生活を強いる大日本帝国を拒否する。が、市川房枝らと立ち上げた新婦人協会から離脱するなど、自己中心的と批判を浴びたこともある。やがて消費組合運動へ、婦人解放運動へと向かって行く。
 著者は1984年東京都生まれ。東北大文学部で日本思想史を学ぶ。吉野作造記念館(大崎市)研究員。
 東北大出版会022(214)2777=3456円。

河北新報
2018年8月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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