『藤田嗣治がわかれば絵画がわかる』布施英利著
[レビュアー] 産経新聞社
没後50年の節目に東京で過去最大級の回顧展が開催中(京都に巡回予定)であるなど、注目度が高まっている画家、藤田嗣治(つぐはる)(レオナール・フジタ、1886~1968年)。絵画がわかるようになるかどうかは別にして、本書を読めば、フジタが「絵画=フィクションの世界」を体現した“本物の”芸術家だったと理解できる。
若き日のパリ郊外の風景画、乳白色の裸婦、中南米や秋田の風俗を描いた大壁画、戦争画、子供たち、晩年の宗教画…。一貫性がないように思えるフジタの絵画の神髄を、「鏡」「線」「色彩」という3つの視点で読み解く。(NHK出版新書・1000円+税)