「怪談牡丹燈籠」は、近代落語の祖・円朝の代表作で、明治17年に刊行。高座で演じたままを速記したものなので実に読みやすい。
カランコロンと駒下駄の音を響かせ、幽霊が恋人の前に姿を現す。「お露新三郎」「お札はがし」として現在も演じられる若い2人の悲恋の場面はよく知られているが、全体は長大な物語。敵討ちと忠義、母子の再会などがからみあい、因果応報の世界が繰り広げられる。
欲にくらんで魔よけの札をはがした中年夫婦の行く末は、卑小な人間に宿る悪を映してじわりと怖い。三遊亭円朝著、角川ソフィア文庫・960円+税)
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2018年8月19日 掲載
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