サブスリー漫画家・みやすのんきの実践トレイルランニング!

インタビュー

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サブスリー漫画家 激走 山へ!

『サブスリー漫画家 激走 山へ!』

著者
みやすのんき [著]
出版社
実業之日本社
ISBN
9784408338002
発売日
2018/06/08
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

サブスリー漫画家・みやすのんきの実践トレイルランニング!

[文] 磯部祥行(編集者)

サブスリー漫画家・みやすのんき氏が、オタク的な「あまりにも細かすぎる?」視点でトレイルランニングを考察、日本を代表する山岳レースを実践してみた!

『やるっきゃ騎士』『冒険してもいい頃』『厄災仔寵』などの大ヒット作で知られるマンガ家、みやすのんき氏は、いまやマラソンの教則本を立て続けに出版し、いずれも評価が高い。そしてこの夏、舞台を「平地のマラソン」からトレイルランニングに移して『サブスリー漫画家 激走 山へ!』を上梓した。マンガ家ならではのオタク的な「あまりにも細かすぎる」視点からのランニングフォーム考察は、山でも加速する!

 ***

――みやす先生は、もはやマンガ家の範疇を超えてマラソンのセミプロの先生みたいになっていますね。でも昔から陸上競技が得意だったわけではないのですよね。なのに50代でサブスリー(フルマラソンを2時間59分59秒以内で完走すること)を達成されました。若い選手も含めても全マラソン競技人口の3%に満たないとか。

セミプロなんてとんでもないです。運動は得意かというとまったく逆で、子供のころから身体が弱く、駆けっこはいつもビリでした。腰椎や足首の骨折、膝の靭帯の断裂も経験していて、とてもマラソンに適したスペックではないのですが、弱者ならではの「ランニングエコノミー」つまり効率的に身体を使うことを試行錯誤をしながら突き詰め、真剣に練習して一年半の52歳でサブスリーを実現しました。その考察は『走れ!マンガ家ひぃこらサブスリー』『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』にまとめています。

――市民ランナー目線で書かれたからこそ「我が意を得たり。わかりやすい!」と評判ですね。

世のマラソン本は、陸上競技の監督や元選手など陸上エリートの方々が書いたものばかりで、市民ランナーの感覚で書かれたものはほとんどありません。私が初めてマラソンに出た時は7時間オーバーで失格でした。でも、そんなところからでもサブスリーは頑張れば実現できるんです。だからこそ、読者の皆さんの支持を得たのだと思います。

――今回のテーマはトレイルランニング。もともと登山を楽しんだりしていたのですか。

85kgのメタボだったに時に友人たちと関東近郊の山に(歩いて)登りました。そこで休憩ばかりせがんで後れを取ったことから、体力をつけなくてはと自覚し、50歳になってからランニングを始めました。ゆえにマラソンにはまったのは山がきっかけなんです。だからトレイルランニングも自然にやるようになりました。精神を集中させて山を走る事は神経が研ぎ澄まされて「生きてるな」と実感できます。本書において「富士登山競走」と「日本山岳耐久レース(通称ハセツネCUP)」に出場しましたが、どちらも日本における最高難度の大会でした。伝統ある大会に出場できて大変貴重な体験でした。でも、だからこそ出場するにあたって、レースの組み立てやトレーニングを綿密に考察しました。そのことを詳細に書いています。

――目からウロコの上り・下りの「歩き方」から「走り方」まで、50点以上のイラストで解説していますね。登山の常識として語られていることとは違いすぎて、すぐには頭の中では理解できませんでしたが、確かにビルの階段などで試してみると頷けますね。合点がいきました。

地面に垂直な姿勢を保って下るのは理想論(右)。「へっぴり腰」が理想の姿勢(左)
地面に垂直な姿勢を保って下るのは理想論(右)。「へっぴり腰」が理想の姿勢(左)

上り・下りでも、ランニングエコノミーを突き詰めるという考え方に変わりはありません。当然上りと下りでは走り方が変わります。上りは心肺がきつく、ふくらはぎやハムストリングスなどの筋肉を引き伸ばされる辛さとの戦いになります。テクニカルな下りは平坦な舗装路を走るマラソンランナーには苦手とされる分野でバランスやテクニックとある程度の度胸を必要とします。特にロングのトレイルレースではずいぶん差がついてしまいます。筋肉の疲労の蓄積を最小限にするための、身体の重心の移動、腕振り、身体全体の動きなどをていねいに説明しました。

――「富士登山競走」と「ハセツネCUP」には立体的なコース地図がついていますね。

巻頭の折込カラー地図
巻頭の折込カラー地図

巻頭折り込みにカラーでコース全体を、本文中には別角度からコースを分割して立体図面と場所がわかる写真と合わせて掲載しています。山岳のレースでは平坦なマラソンより勾配があるぶん、真上から見た地図ではわからないことが多いのです。立体的な図面のほうがずっと直感的に傾斜や距離がわかります。レースの臨場感を持たせるために、これらは本当にこだわった部分です。これらの地図は、レースに挑戦しようと思っているランナーにはとても参考になると思います。

ハセツネCUPのコース地図。分岐での進む方向もバッチリわかるので、試走にも便利
ハセツネCUPのコース地図。分岐での進む方向もバッチリわかるので、試走にも便利

七合目手前からのゴジラの背中のような岩場。両手も使って身体を1mmでも押し上げる
七合目手前からのゴジラの背中のような岩場。両手も使って身体を1mmでも押し上げる

――富士登山競走では路面の様子が手に取るようにわかりますし、ハセツネCUPでは深夜のレースシーンのリアル感がすごいです。

富士登山競走は、富士吉田市役所から山頂までの21kmの距離、標高差3000mを4時間30分の制限時間内に駆け上がる大変厳しい大会です。完走率も50%に満たないですし、標高2500m以降は空気も薄く高山特有の症状に悩まされます。私は3時間48分で完走できましたが、今でもあの苦しさはトラウマです(笑)。

ハセツネCUPは普通の登山なら5日間はかかる山岳縦走71.5kmの行程を、24時間以内での完走を義務付けられた大会です。多くは夜を走り累計標高差は4582mで国際的なトレイルレースでももっとも過酷なカテゴリーに相当するコース難度です。私は12時間30分で完走しましたが、奥多摩特有の濃霧に悩まされ、真っ暗闇のなかミスコースを何度もしてしまいました。雨も降って路面状況も悪く、次回の挑戦ではコンディション次第では10時間台でフィニッシュできると思います。

――そして、ハセツネCUPの48日後にはフルマラソンに参戦という。

富士登山競走とハセツネCUPを完走し、さらにその直後にフルマラソンでサブスリーを達成するのが自分の課題でした。陸上の専門家ではなく、一介のマンガ家が説得力を持つためには体当たり取材も必要だと思いました。ただ12時間以上山を走った(彷徨った?)ハセツネCUPの消耗は予想外に大きく、また、マラソンの練習と山のレースは全くの別物でかなり大変でした。しかし何とか本書のタイトルに、三たび「サブスリー漫画家」とつけることができました。

――標高とスピードの富士登山競走、距離の長さと夜中を走るハセツネCUP、そして平地の舗装路を走るフルマラソンと、それぞれ特徴的なレースは一見、つながりがないように見えるかもしれない。でも、三つのレースに連続出場したからこその深い考察とリアルが本書にある。「(教則本としてだけではなく)読み物としても最高に面白い」という評価も多い。奥多摩の暗闇をヘッドランプで切り裂くように走る姿の描写を読むと、きっと、ナイトトレイルを走ってみたくなるに違いない。本書には、そのノウハウとガイドがぎっしり詰まっている。

■著者プロフィール
1962年生まれ。東京都出身。『やるっきゃ騎士』(集英社 / 月刊少年ジャンプ)にてデビュー。代表作に『冒険してもいい頃』(小学館 / 週刊ビックコミックスピリッツ)、『桃香クリニックへようこそ』、『厄災仔寵』(共に集英社 / 週刊ヤングジャンプなど。近年はランニング、ウォーキングなどスポーツや健康関連の実用書も出版。趣味は散歩、食べ歩き。

実業之日本社
2018年8月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

実業之日本社

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