<東北の本棚>名家の系譜と気質探る

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陸奥伊達一族

『陸奥伊達一族』

著者
高橋 富雄 [著]
出版社
吉川弘文館
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784642067645
発売日
2018/06/12
価格
2,420円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>名家の系譜と気質探る

[レビュアー] 河北新報

 「独眼竜」の異名で知られる伊達政宗は戦国大名、仙台藩祖として抜群の知名度を持つが、伊達家として前後の歴史が広く知られているとは言い難い。
 本書は鎌倉時代以降、伊達家が力を蓄えて奥州一の名家となる「政宗以前」、奥州王として外交にも挑んだ「政宗の時代」、明治維新によって仙台藩が消滅するまでの「政宗以後」に分けて歩みを紹介する。
 伊達家は奥州合戦の後、源頼朝から伊達郡を拝領した御家人が始祖とされる。奥州統治の中枢を担った行朝、陸奥国守護職などとして権威を確立した稙宗(たねむね)、晴宗の時代を経て政宗の黄金期を迎えた。
 周辺の名家を吸収し、組織が肥大化する中で一門、一家、準一家などの門閥が形成された。複雑な階層構成がミニ幕府の様相を呈した。著者はこの体制が内部抗争や意思決定の遅れを招き、伊達騒動や戊辰戦争での敗北につながったと批評する。
 明治期以降、伊達の誇りと栄光を再建したのが北海道開拓だ。亘理や岩出山の伊達一族などが刀をくわに持ち替え、苦境を乗り越えた。
 「東北は一つ」という課題を掲げて歴史を組み立てようとした伊達家。著者はこうした経緯を十分に踏まえ、仙台・東北の未来を考える必要性を強調する。「伊達者」「大藩貧乏」といたキーワードから気質を読み解く論考も興味深い。
 1987年、新人物往来社から刊行された本を「読みなおす日本史」シリーズとして復刊した。
 著者は21年北上市生まれ。東北大教授、盛岡大学長、福島県立博物館長を務め、2013年死去。
 吉川弘文館03(3813)9151=2376円。

河北新報
2018年9月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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