『なぜ倒産』 日経トップリーダー編集部編

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なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則

『なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則』

著者
日経トップリーダー [編集]/帝国データバンク [著]/東京商工リサーチ [著]
出版社
日経BP
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784822292829
発売日
2018/07/21
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『なぜ倒産』 日経トップリーダー編集部編

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

失敗には定石がある

 先週この欄で上質の怪談エッセイをご紹介したのだが、今週の本書もある意味ではもっともリアルな怪談、実際に起こった怖い話を集めた一冊だ。「二十三社の破綻に学ぶ失敗の法則」という惹句(じゃっく)に、純粋に興味を引かれる方は幸せだが、他人事ではない恐怖と切迫感を覚える方もおられるだろう。後者の読者の方にとって本書が良き参考書になれば、ケーススタディの素材の二十三社の「社霊」も、きっと安らかに成仏することができるだろう。

 本書のもととなる「破綻の真相」は、二十五年以上も続いている連載企画だという。大手企業の破綻はニュースで騒がれるが、中堅・中小企業の破綻は(その業界内ではトピックである場合でも)ほとんど世に知られることがないまま起きて、ひっそりと収束する。私自身、目次で「長崎出版」と「平和堂貿易」の社名を見つけ、「え、倒産してたんだ!」と驚いてしまった。そういえば、いつの間にか広告とか見かけなくなっていたなあ、と。

 本書は全三章構成、「第1章 急成長には落とし穴がある」「第2章 ビジネスモデルが陳腐化したときの分かれ道」「第3章 リスク管理の甘さはいつでも命取りになる」。さらにそのなかに十一ヵ条の「破綻の定石」があり、これがまた具体的でわかりやすくて面白い――などと言っては不真面目なようで申し訳ないのだけれど、経済ミステリーの短編集を読んでいるみたいにスリリングなのである。

 「脚光を浴びるも、内実が伴わない」

 「幸運なヒットが、災いを呼ぶ」

 「起死回生を狙った一手が、仇(あだ)に」

 「現場を統率しきれない」

 企業だけではなく、どんな組織にも教訓となりそうな一文が並んでいる。成功には定石がないが、失敗には定石がある。「成功はアートだが、失敗はサイエンス」という金言も、胸に突き刺さるではありませんか。

 ◇日経トップリーダー=1984年創刊の日経BP社が刊行する企業経営者向け月刊誌。2009年に現在の誌名に。

 日経BPマーケティング 1600円

読売新聞
2018年9月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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