『民主主義にとって政党とは何か』 待鳥聡史著

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民主主義にとって政党とは何か

『民主主義にとって政党とは何か』

著者
待鳥 聡史 [著]
出版社
ミネルヴァ書房
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784623083596
発売日
2018/07/02
価格
2,808円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『民主主義にとって政党とは何か』 待鳥聡史著

[レビュアー] 橋本五郎(読売新聞社特別編集委員)

「澄んだ目」の政治解剖

 各国の民主主義は政党を前提にして展開されている。しかし、そもそも政党とは何なのか。一部の利益を追求する勢力としての政党がなぜ公益の担い手になりうるのか。政党不要論が収まらない中で、政党政治の再生は可能なのか。

 本書は政党をめぐる本質的な疑問に答えるべく最新の学問的成果も盛り込みながら歴史的、理論的にわかりやすく解説をしてくれる。行き届いた分析、叙述はイデオロギーはもとより、先入観や俗説にとらわれることなく「澄んだ目」で終始しているのが印象的である。安倍内閣の評価にあたっても、あくまでもニュートラル(中立的)だ。

 著者によると、安倍政権の経済政策は中道左派のお株を奪っている。外交・安全保障面を含め、グローバル化や先進諸国間の協調には積極的に対応しつつ、その成果が従来不利な立場にあった人々(たとえば女性)に行き渡るようにするもので、世界的な尺度からみれば、保守や新自由主義ではなく、中道左派に最も近いことが否定できない。

 支持者に利益配分を行う存在として政党が生き延びることはもはや難しかろう。それでは何を存在理由にすべきなのか。著者が着目するのは「情報伝達機能」である。政策決定のための複雑で大量の情報を縮約して有権者に伝えるとともに、有権者の考え、意見を政策決定に生かすのが大事な役割になる。

 現代は政策課題が複雑に絡まり合い連動している。複数の制度や論点の間のつながりを明らかにし、「何と何がリンクしているのかをはっきりさせて、パッケージとして提示する機能は、政党が果たすべきもの」と提言する。

 これらは常識的と言えば常識的な真っ当な提案である。しかし、今の日本の政党がその機能を果たしているとは到底思えない。与野党を問わず、この一見当たり前のような機能を果たすための努力をしているのかを自らに厳しく問うべきだろう。

 ◇まちどり・さとし=1971年生まれ。京都大教授。専門は比較政治論。著書に『代議制民主主義』など。

 ミネルヴァ書房 2600円

読売新聞
2018年9月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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