『いじめで死なせない』 岸田雪子著

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いじめで死なせない

『いじめで死なせない』

著者
岸田 雪子 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103520115
発売日
2018/06/18
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『いじめで死なせない』 岸田雪子著

[レビュアー] 森健(ジャーナリスト)

小さなSOSに注意

 いまこの時間にも登校に悩んでいる子どもがどこかにいるかもしれない。

 自殺総合対策推進センターによると、子どもの自殺がもっとも多いのが8月下旬、次いで9月上旬だという。夏休み明けで学校に戻るのがつらくなるのが大きな理由と見られている。

 日本テレビで記者やキャスターを任じてきた著者は、そんな子どものいじめを20年あまり取材してきたという。本書はいじめから生き延びたサバイバー、保護者、友人、教師、そして加害側と多角的な視点と数多くの証言から、子どものいじめを深く検証したものだ。

 ある父親は財布のお金が減っていることで異変を感じた。抜き出していた子どもを捕らえて、尋ねたところでいじめが発覚した。父親は後に加害児童にも話を聞いたうえで、加害側に損害賠償を起こしている。小5の時、マンション2階から飛び降りて自殺を図った男子は、いじめでPTSDも発症するほど心が傷ついていた。

 金銭の要求や身体的ないじめというほかに、昨今はネットのツイッターで「死ね」と書かれたり、グループで使うLINEから一人外されたり、表面的にわかりにくいいじめもある。

 だが、いじめに遭っている子どもの多くは、自殺につながるサインを出してもいる。ある男子は薬品をネットで注文し、業者から自宅に問い合わせがあった。ある男子はLINEのやりとりで「次会うときは死んでからだよ」と首を吊(つ)る縄の写真まで送っていた。

 著者は遺族や友人への取材で悲痛なやりとりや背景を明かしていく。そのうえで重要なのは子どもが出す「小さなSOS」のサインに気づくことだと指摘する。友だちづきあいや身体のアザ、怒りっぽくなったり、甘えてきたり。そんなサインを感知し、大人が耳を傾けることがいじめからの救いにつながるという。

 切実な思いが全ページに溢(あふ)れており、著者の問題意識に揺さぶられずにはいられない。

 ◇きしだ・ゆきこ=1970年生まれ。早稲田大卒。日本テレビで文部省担当などを経て昨年から報道局解説委員。

 新潮社 1400円

読売新聞
2018年9月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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