『フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体』
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ニッポンを横切る“大きな溝”は謎だらけ
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
『フォッサマグナ』というタイトルを見聞きして、何の話かすぐピンと来るアナタは、地元出身か地学好きか『日本沈没』世代か。地図で見る本州がタツノオトシゴの腰でクイッと折れ曲がってるあのあたりのことで、またの名を大地溝帯とか中央地溝帯とか。
発見は明治時代と早いし、デカくて地上にあるから観測しやすいし、それこそ小松左京たちが騒いだ時期もあったのに、いまだにわからないこと山積で、世間の認知度も低い……ってのが、この新書の大枠です。
著者の藤岡換太郎は山、海、川の成り立ちを解く3部作もある研究者で、今回もフォッサマグナに関する新しい知見をあれこれ伝えてくれてはいる。が、随所で滲み出てるのは“これでわかった気にならないでね”という科学者の良心。できると言い張ってた地震予知を結局放り出したような手合いとは違い、無知の知を隠さない書き手なのがありがたい。
素人としてちょと怖いのは、同じブルーバックスの8月の新刊で『太平洋 その深層で起こっていること』なる一冊が出たこと。テーマは海洋科学で地震と直結はしないんだけれど、信頼度の高い玄人にフォッサマグナだ太平洋の深層だと同時に唱え出されると、あらためて備えや覚悟を求められてるようでね。
なんて思ってたら震度7の大地震。今回は震源がフォッサマグナとも太平洋とも縁の薄い北海道の内陸だったけれど、いや、あらためて、あらためて。