「本当は営業になんてなりたくなかった」。そんな人が知っておくべき3つのこと

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「営業」は必ず君の武器になる

『「営業」は必ず君の武器になる』

著者
高城幸司 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
産業/商業
ISBN
9784534056191
発売日
2018/08/30
価格
1,430円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「本当は営業になんてなりたくなかった」。そんな人が知っておくべき3つのこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「営業」は必ず君の武器になる 「自信がない」「向いていない」と思っている人ほどうまくいく』(高城幸司著、日本実業出版社)の著者は、かつてリクルートで営業として多くの売上新記録をつくり、「最優秀営業」を6期連続で受賞したことがあるという人物。そうした実績を軸に、現在は人事コンサルティング会社を経営しているそうです。

とだけ聞くと順風満帆だったようにも思えますが、最初に営業に配属されたときには絶望感に支配され、すぐに転職を考えたのだといいます。ところが、ある先輩の行動を真似てみたところ、日々の仕事は「学べる」「挑戦できる」機会にあふれていることに気づき、仕事に自信が持てるようになったのだとか。

つまり本書は、そうした実体験を軸としたもの。営業に配属された人、特に営業をやるということを喜べないでいる人に向け、営業として過ごす時間を楽しく、有意義なものにしてほしいという思いから書かれているのだそうです。

本書が目指しているのは、営業の仕事に「働きがい」を見出してもらうことです。働きがいとは「仕事をするだけの価値と、それに伴う気持ちの張り」のこと。つまり、「仕事にはツラさ、しんどさがあって当たり前。ただし、それを超える働きがいが見出せるなら素敵な職業」なのです。(「はじめに」より)

そういう意味で営業は働きがいのある職業であり、働きがいとは、それを見出す努力をしてこそ出会えるものだと著者は主張しています。しかし現実的に、それに気づいていない人がとても多いというのです。

きょうはPART 1「本当は『営業』になりたくなかった君へ」のなかから、“迷い”を打ち消してくれそうないくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

「本当は営業になりたくなかった…」

「営業部に任ず」という事例が出されたとき、「本当は宣伝部に行きたかったな」というような気持ちを抱く人は決して少なくないはず。それは著者も同じで、営業への配属が決まった日のガッカリ感は、いまでもはっきり覚えているそうです。

日本では、約500万人が営業の仕事に従事しています。数ある職業でも人口数はトップクラスです。 ところが、2009年の産業能率大学の調査によると、約半数が「続けたくない」と回答。

その理由を尋ねると、「不景気で売れない」「利益達成のノルマが厳しい」などと、ノルマ(売上目標)や競争に対するストレスが挙げられています。 つまり約250万人のビジネスパーソンが、日々「営業をやめたい」とネガティブな職業観を持ちつつ仕事をしているのです。(14ページより)

しかし、ここには重要なポイントがあります。約500万人の半分が営業をやめたがっているということは、残りの250万人は「続ける」意思を持っているということだという点。そのなかには、営業という仕事に大きな魅力を感じ、日々の仕事に邁進している人がたくさんいるわけです。

「営業はツラいこともありますが、同じくらいに働きがいを感じる仕事です」 実際に自動車ディーラーの営業をしている江本さん(25歳。仮名)は、こう話していました。

売上目標に追われて大変だが、達成した時の爽快感はたまらない。上司は売上数字を達成させるために厳しい要求をしてくるが、成果が出ると褒めてくれるとも。 つまり、キツイ・ツラいと相反する魅力もあると感じているようです。(15ページより)

このように、「つらいけど、働きがいを感じる」というタイプは、営業職には少なくないといいます。そこで大切なのは、営業職でイキイキとがんばっている人の声に耳を傾けること。

そこには、自分の仕事(=営業)に対して働きがい、魅力を再認識できるキーワードがたくさんあるというのです。(12ページより)

営業の仕事は将来役に立ちますか?

これからの時代においては誰にとっても、営業的なスキルを持つことが避けられなくなっていると著者は指摘しています。たとえば営業スキルが必要なさそうな医者や弁護士でも、「自分を売り込む」営業力は必須だということ。

また会社でも、営業をはじめ、複数の仕事を経験させる人事異動がトレンドになっているそうです。

これまでと違い、日本経済は低成長時代になりました。つまり、高度経済成長の頃のように仕事があふれているわけではないのです。誰もが仕事を取り合っているため、専門家でも営業活動をしないとお客様(顧問先)が取れません。

資格取得者が増え過ぎたために、資格があるだけでは食べていけないのです。たとえ弁護士でも、黙って座っていれば「先生ご相談があります」と仕事が舞い込む時代は終わりました。自ら仕事を取りにいく営業の精神がないと食べていけないのです。(15ページより)

それは、会社に勤務するビジネスパーソンも同様。経理部に配属されたとしても、同じ部門に長く勤務することは難しくなっているわけです。

なぜなら企業は、仕事のノウハウが人に依存しないように「ジョブローテーション」を頻繁に行うようになっているから。管理部門を3年経験したら、次は営業部門も経験するというように。

あるゼネコンでは、「新たなキャリア形成の機会になることを望む」と、設計部門の社員の半数を3年以内に営業職に異動させると宣言したそうです。当然ながら設計部門は大騒ぎになったものの、大半の社員は受け入れて営業職へ移動していったのだといいます。

このように、営業職への人材の大移動はあちこちで行われるようになっているといいます。それは、ビジネスパーソンに営業の仕事を求められる機会が増えていくということでもあるでしょう。

・営業的な仕事に対して苦手意識がある…話すのが苦手、押し売りしているようでイヤ

・すでに営業の仕事についていて悩んでいる…うまくいかないからやめたい、本当は営業になりたくなかった。

(18ページより)

このように感じている人に対して著者は、「この先自分で食べて行きたいのなら、悩んでいないで飛び込んでみましょう」と言いたいそうです。

「どんな職業にも営業がついてくる」と腹をくくり、「だったら少しでも早いうちにやっておいたほうがいい」と思うべきだということ。自分に与えられたミッション(役割)に対しては、ポジティブに取り組んだほうがいいに決まっているという発想です。

心のなかでは「しんどい」とか「やや苦手」だと思っていても、笑顔で生き生きと働いていれば、上司やお客様から「この仕事はあいつに任せてみよう」と期待感を抱いてもらえるはず。働きがいのある仕事や、挑戦して成長できるチャンスなどを提供したいと思ってもらえるわけです。

かといって著者は、営業をいきなり「好きになれ」と言っているわけではありません。不思議なことに、イキイキと仕事をするフリをしてみるだけでも仕事が好きになれるもの。いってみれば、どんな仕事であっても、自分の発想と行動ですばらしいものになるということです。(16ページより)

売り込むのは苦手です

当然ですが、「売れている営業は売り込むのがうまい」と言われます。しかし勘違いすべきでないのは、「不要な商品・サービスを押し売りしているわけではない」ということ。

「注文しようと決めてはいたけれど、時期をいつにしようか?」「何社も比較したけれど、同じような状態でどこにお願いしようか?」など、「迷っている状態のお客様の背中を押す」という程度なら許されるはず。

しかし、それ以上のごり押しをすれば、仮に1回は契約が取れたとしても、結果的には信頼を失って、次の仕事が来なくなる可能性は大いにあるわけです。

・誰でもよければ自分に注文いただく

・後回しでなく、いますぐに注文いただく

・予算が余っているなら提案機会をいただく

(33ページより)

このような姿勢が大切であり、こうしたことができるのは、営業の人柄=人間力次第だということ。では、人間力とはなにを指すのでしょうか?

著者が、この質問をある広告代理店に勤務する若手社員に投げかけたところ、「笑顔や、素敵な服装、あの人についていきたいと思われるような立ち居振る舞い」という答えが返ってきたそうです。この回答については、「それもあり」と言えるでしょう。

ただし営業における人間力とは、見た目よりも、お客様との関係を構築する部分に起因するもの。それは「この人と仕事がしたい」「仕事を任せたい」と思わせる姿勢、すなわち「次の姿勢」が見えることだといいます。

・話をしっかり聞くための質問ができる

・相手を立てつつ、自己主張も抜かりない

・お客様のために努力する姿勢を示す

・この3つを磨いていこうとする向上心がある

(34ページより)

つまりは、マインド(精神)コミュニケーションが大切だということ。

「仕事は成果で示すものなのだから、寡黙に淡々とやればいい」と考える人もいるかもしれませんが、お客様の状況や要求は時間とともに刻々と変わるもの。

そんな状況を把握するためには、コミュニケーションの密度を高めることが不可欠。そのため、「どちらかといえば無口なタイプ」だったとしても、営業の仕事においては積極的なコミュニケーションを心がけるべき。

お客様との商談の場面は、営業にとっての舞台です。そのため、「普段は無口ですが、仕事では明るく、気配りのできる営業を演じています」と、自分のタイプではない役柄を演じていると考えてみるのもひとつの手段だということ。

コミュニケーションやマインドを駆使して人間力を示し、「この人に仕事を任せたい」と思わせることが重要だという考え方です。(31ページより)

本書は2012年に出版された『入社1年目を「営業」から始める君へ』の新装改訂版。タイトルを改めて出したのは、「自信がない…」「本当は別の部署に行きたかったのに…」という悩みを抱えている後輩たちに、「営業経験は、最終的には自分の人生にとって大きな『武器』になるのだ」ということを強く伝えたかったからなのだそうです。

営業としての自分に迷いを感じている方は、手にとってみるべきかもしれません。きっと役に立ってくれることでしょう。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年9月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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