<東北の本棚>社会問題に鋭い批判も
[レビュアー] 河北新報
仙台市泉区在住の漫画家が、奇抜なアイデアと風刺を効かせて描いたコメディー漫画だ。軽妙かつ辛辣(しんらつ)な表現がさえ、社会問題や流行に対する鋭い批評精神も伝わってくる。
メキシコで重い荷物を運ぶ重労働をしているロバの母子と飼い主のおじさんを軸に物語が展開する。好奇心が旺盛な子ロバのドステンは「どうして、どうして」が口癖で、いつも周囲を困惑させている。
ドステンはある日、テレビで日本の生活ぶりを見て憧れるが、自分の過酷な生活との格差にジレンマを抱き、駄々をこねる。その末に母ロバや飼い主を巻き込んで、奇想天外なドタバタ劇を繰り広げる。
アイドルやダイエットブーム、スマートフォンの普及、米大統領選…。日本の世相や国際情勢などを絡めた20話と描き下ろしの4こま漫画4話を収録している。笑いと毒、ペーソスが絶妙な加減でミックスされ、幸せとは何かを問うような内容でもある。
著者は1955年宮城県加美町生まれ。24歳で漫画家デビューした。人気作「ぼのぼの」で講談社漫画賞。作画を手掛け、映画化された「羊の木」(山上たつひこ原作)で文化庁メディア芸術祭優秀賞、「誰でもないところからの眺め」で日本漫画家協会賞優秀賞を受賞している。
竹書房03(3264)1576=1080円。