AIによる犯罪捜査の可能性――『PIT特殊心理捜査班・水無月玲』著者新刊エッセイ 五十嵐貴久
エッセイ
『PIT 特殊心理捜査班・水無月玲』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
AIによる犯罪捜査の可能性
[レビュアー] 五十嵐貴久
何だか卒業論文のようなタイトルですが、『PIT 特殊心理捜査班・水無月玲』は現在の〈第3次AIブーム〉(東京大学特任准教授松尾豊氏)をヒントに構想を練った小説です。かつて、人工知能を搭載したロボット刑事が活躍したり、未来予測ができる超能力者があらゆる犯罪を予言したりする世界を描く小説や映画がありましたが(今ももちろんあります)、絵空事ではなく、リアルにそのような現実が訪れる可能性が高くなっています。
作品内でもいくつか具体例に触れていますが、欧米ではAIによる犯罪発生予測の実験が行われており、高い確率で犯罪を防止できることが実証されていますし、新技術が次々に開発され、犯罪の発生を未然に防ぐ方法が研究されています。
本書はプロファイラーとAIの専門家(SE)が複数の猟奇殺人の謎に挑むというエンターテインメントになっていますが、今後AIを中心とする科学捜査が進んでいくと予想されますし、他の多くの職業がそうであるように、2030年前後には「警察の仕事」あるいは「警察という組織」の概念が現在とまったく違ってくるのではないでしょうか。
そんなことをふらふらと考えつつ、書かせてもらいました。私の個人的な想いとしては、探偵が天眼鏡で床の埃を見つけたり、刑事たちが猛暑の中、大汗を掻きながら歩き回るようなスタイルが残ってほしいのですが、どうやら近い将来、そういう小説は書けなくなるのでしょう。
もっとも、究極のデジタルより古めかしいアナログの方が威力を発揮する場合があるのも本当で、何もかもAIの判断が正しいというわけでもありません。いろいろやり尽くされた感のあるミステリー小説ですが、可能性は大いにあると思っています。
専門家でもない私がこのような小説を書いていいのか、というご批判もあるでしょうが、とりあえず読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。