<東北の本棚>保育者の観察眼養って
[レビュアー] 河北新報
遊び重視の「自由保育」か、大人主導の「設定保育」か。揺れる保育現場の中で、元幼稚園園長の著者は、子どもには自ら育とうとする力があると説き、枠を超えた「子ども中心の保育」を提案する。
人と会話せず電車の絵本が好きな、ある年中クラスの男児は、いつの間にか一緒に絵本を読む友達ができた。年長になるとクラスではやった郵便屋さんごっこの帽子から鉄道員を思い付き、電車絵本でつながった友達と大型ブロックで電車を作った。次第にみんなが一緒に遊び始め、男児は駅長になった。
「いくつもの遊びが融合しては消え、前の経験が生かされ、集団で列車が走りだす遊びに発展した」と著者。保育者の役割は、材料を用意するなど、遊びが展開しやすい環境設定が大部分を占めたという。
「指導ではなく、みんなで遊ぶ楽しさと衝突、仲直りの温かさの体験を通し倫理や道徳の基礎を育む。この自力の体験を保障するのが大事」と強調する。
実践するには、子どもの表情、集団の雰囲気を察知する保育者の観察眼が欠かせない。著者は保育中に撮った写真を基に保育仲間で話し合うことを勧めた。
尚絅学院大名誉教授。歯科医師でもある。09年から7年間、尚絅学院大付属幼稚園園長を務めた。
芽ばえ社03(3830)0025=1404円。