『緑のなかで』
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北海道の景色はすべてが色濃い
[レビュアー] 椰月美智子(作家)
去年の夏、北海道大学に取材に行きました。キャンパスツアーに参加したところ、案内役の男子学生さんの出身地が、わたしの住んでいる神奈川県小田原(おだわら)市だということが判明!
まさか北海道大学で、同郷の学生さんに出会えるなんて! まさに奇跡だと思いました。彼はわたしもよく知っている地元の高校を卒業し、遠い北の大地で大学生活を送っていたのです。これは絶対にいい小説になる! と確信しました。
すぐに取材を申し込み、たくさんの貴重なお話を伺うことができました。そのなかで、彼が言った「北海道の景色はすべてが色濃い」という言葉は特に強く印象に残り、そこから、この小説はスタートしました。
その後、小説の舞台となる恵迪寮(けいてきりよう)(北大の自治寮)に取材に行き、ここでも寮生さんたちに、いろいろなお話を伺うことができました。はじめて目にする恵迪寮は思った以上のインパクトでしたが、とてもたのしく有意義な時間を過ごし、ここでの寮生活経験は一生の宝になるだろうなと感じました。
『緑のなかで』は、北の大地の大学三年生、啓太(けいた)の一年間の物語です。大学生が主人公の話ははじめてでしたが、取材で話を聞かせてもらった彼ら、彼女たちのイメージそのままに、自然と書き進めていくことができました。
はじまりは、ベネッセの進研ゼミ高校講座の小冊子での連載でした。大学受験を目指す、高校三年生向けの物語「おれたちの架け橋」です。高校生だった彼らが大学生になり、それぞれの青春を謳歌しています。
彼らの喜び、悲しみ、苦悩を一緒に感じてもらえたらうれしいです。多くの方に届きますようにと願っています。
末筆ではありますが、今回の北海道胆振東部地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。