『政権奪取論』 橋下徹著

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政権奪取論 強い野党の作り方

『政権奪取論 強い野党の作り方』

著者
橋下徹 [著]
出版社
朝日新聞出版
ISBN
9784022737878
発売日
2018/09/13
価格
961円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『政権奪取論』 橋下徹著

[レビュアー] 三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

組織の重要性を学んで

 橋下徹氏がまとまった政治の本を出した。随所に飛び出す喧嘩(けんか)を売るスタイルは措(お)いてシンプルに読むと、なかなか考えさせられる本だ。

 日本型組織の問題点については、山のような分析がある。だが、そもそも日本に足りないのは「振り返り能力」だ。大阪に根付いた維新が行った諸々の変革、保守二大政党の一角を創る試み。学びを振り返った意義は大きい。

 彼、あるいは維新は誤解されてきたと思う。維新ムーブメントは「村社会」の内なる反抗として出てきた。それゆえに「ポピュリズム」や「組織いじり」との批判を受けがちだ。

 しかし、彼らには政策原理主義的なところがあった。施策目的の達成度の数値化やそれによる撤退判断のルール化、身を切る改革などはその例だ。橋下氏はプロセスに徹底的に拘(こだわ)り、世間に向けた発信を重視した。一部に警戒されたのは、むしろその原理主義ゆえである。

 本書の面白い点は、政策よりまずは組織、というメッセージが打ち出されていること。もちろん、その意図は政策が重要でないというものでは微塵(みじん)もない。政策を実行するためには「組織」つまり究極的には人間関係の機微を理解する必要があるということだ。「僕にはそういう人間関係力を身につけることは絶対に無理だ」という件(くだり)には、原則論や透明性やプロセスには強く拘りながらも、組織運営に苦慮した彼ならではの正直な学びが詰まっている。

 最後に触れておきたいのが、副題の「強い野党」の中身である。それは自民党とは明確に違う道であり、自由で開かれた社会を目指すものでなければならない、と彼はいう。実は、ここにこそ政権交代を本気で目指してきたエネルギーが存在する。与党が崩れたときに野党に風が吹く、と本書が指摘する通り、風の可能性はいつも日本社会に眠っている。それに備えた準備ができているか、というのは特定の党を超え、日本に突きつけられた問いなのである。

 ◇はしもと・とおる=1969年生まれ。弁護士。大阪府知事、大阪市長を歴任。「日本維新の会」を創設した。

 朝日新書 890円

読売新聞
2018年10月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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