『ニッポン離島の祭り』 箭内博行著

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ニッポン 離島の祭り

『ニッポン 離島の祭り』

著者
箭内博行 [著]
出版社
グラフィック社
ISBN
9784766131758
発売日
2018/09/10
価格
2,376円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ニッポン離島の祭り』 箭内博行著

[レビュアー] 塚谷裕一(植物学者・東京大教授)

 数年前、九州の離島で植物を調査中に、たまたま集落の祭に立ち会ったことがある。独特な装束の若い衆たちが、一軒一軒を訪れては、その庭先で短い踊りを踊るというもので、私たち以外、村の人も含めて誰も見物人がいないという、気恥ずかしいほど素朴な祭であった。

 そうした祭は今日、本州では珍しい。大規模の有名な祭ともなると、当日に御輿(みこし)を担いでいるのは地元の人とは限らない。各地で御輿を担ぐことを趣味とする、いわゆるプロの担ぎ屋がいるからだ。それを見物するのも、ほとんどは外からの観光客である。

 本書は離島で営まれている祭を集めた写真集だ。祭を営む人々の雰囲気から、漁業の土地だとか、稲作の土地だといったことがよく分かる。地域が主になってこその祭であることを、再認識する写真群だ。参加者が一体となって楽しんでいるのが分かる祭もあって、それは見ていても楽しい。離島ならではのキャラクター、風習も珍しい。

 一方で本書は、少子化や過疎化により、次第にそれらの継承が難しくなっている現実も伝えている。

 グラフィック社、2200円

読売新聞
2018年10月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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