『まんが アフリカ少年が日本で育った結果』
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カメルーン生まれ関西育ち ルネ少年のコミックエッセイ
[レビュアー] 大竹昭子(作家)
肌の色や話す言葉でその人の出自を決めつけるのは危険、とは世界の常識だが、こと日本ではそうではない。人種や民族に画一的なイメージを当てはめる。そんな融通のきかないアタマを、本書の著者、星野ルネは黒い肌と巧みな日本語+関西弁でシェイクする。
父は日本のアフリカ研究者で、現地でカメルーン人の母と出会って結婚。ルネが三歳のときに日本に帰国した。以来、彼は日本で学校教育を受け、地元の子どもに混じって大きくなった。SNSで発表したコミックエッセイが大人気となり、本書の刊行がなった。
成長期に体験した偏見や誤解がユーモラスに綴られる。黒い肌で、しかもアメリカではなくアフリカ人ゆえに、二重の誤解を受ける。英語ができると思われるが、母語はフランス語。弁当は蒸したバナナをピリ辛スープに浸すアフリカンスタイル。それが容器から漏れてクラス内に異臭が漂うシーンでは、子どもたちの反応を想ってはらはらする。
感動的なのはルネのママだ。入学式に完璧な民族衣装であらわれ、「ルーネー!」と叫ぶ。衆人環視をものともしない堂々たる女性だ。
彼には妹と弟がいるが、ルネよりも肌の色が明るい。ある日意を決してママにそのことを聞くと、「えっ、今気づいたの!?」。ルネはママの連れ子だった。アフリカでは異母兄弟と暮らすのはよくあることで説明するまでもなかったのである。
アフリカ女性との結婚は文化が違いすぎて別れるケースも多いと聞いたことがあるが、星野家はその例に当てはまらなかった。連れ子のある女性を妻にした父も、彼女を温かく迎えて料理の仕方や習慣を教えたおばあちゃんも、日本人離れした寛容さの持ち主だし、父を信じて日本にやってきた母も勇敢。いろんなエピソードが登場するなかで、実はいちばん感動したのはこのことで、一家の自由さと温かさが心に沁みた。