第3版が登場の“定番”の一冊 ニッポンの税制を学ぶ

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日本の税金 第3版

『日本の税金 第3版』

著者
三木義一 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784004317371
発売日
2018/09/21
価格
924円(税込)

消費税増税騒ぎに騙されないために

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 アインシュタインでさえ「理解することが世界で最も難しいのは所得税」とコボしてたらしいから、消費税法人税相続税贈与税固定資産税酒税揮発油税自動車取得税都市計画税その他いろいろがこんぐらかった今のニッポンの税制なんて、まともな解説書を書くだけでノーベル経済学賞モノだろうと思えちゃうのだけれど、そういう本、実はフツーに新書で出てます。

 この『日本の税金』は第3版とあるとおり、初版が2003年、新版が12年に出てる定番。大蔵・財務OB系の手になる“間違った税制の穴を隠す”大本営発表でもなければ、税理士方面による“穴を突く”裏道案内でもなく、“穴を埋める”政策提言の書になっていて、それは著者の三木義一が、政府税調の専門家委員の経験も持ちながら、法学の研究者にして弁護士、現在は青山学院大の学長という御仁ゆえか。

 ニッポンの税はおかしいという前提がまず正しい上に、腐るほどある要説明ポイントを大胆に絞り込み、それぞれの解説をシンプルに抑えてある点も、わかりやすくてありがたい。これを読んで腹を立てるのは税金がらみでウマいことやってる連中くらいだろうし、一方、今さら税金のことなんか知ってどうすんのよと達観気味のアナタは、連中のいいカモ。立ち読みでかまわないから、終章の〆の4行だけでも覗いてみてください。政治や行政、ひいてはアナタが何をすべきか、アインシュタインでなくても理解できるから。

新潮社 週刊新潮
2018年10月18日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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