「アマゾン」と「スターバックス」が、お客様をつなぎ止めるために行ったビジネスモデル

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売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方

『売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方』

著者
理央 周 [著]
出版社
実務教育出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784788919587
発売日
2018/09/20
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「アマゾン」と「スターバックス」が、お客様をつなぎ止めるために行ったビジネスモデル

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方』(理央 周著、実務教育出版)は、2016年に発行された『なぜ、お客様は「そっち」を買いたくなるのか』の続編。前著がマーケティングに必要な要素を網羅した入門書であったのに対し、本書はその実践応用編になっているのだといいます。

ただし本書のほうが、よりお客様の心、消費者インサイトを掘り下げ、実践にも焦点を当てているそう。つまり、構成的にも消費者の心の動きに沿ったものになっているというわけです。

マーケティングの本質は、お客様を動かすこと。 商売の本質は、こちらが何を売りたいかではなく、お客様の目線に立つこと。

お客様はどう心を動かされるのか。 お客様が欲しいのは何なのか。 お客様は何を提案したら喜んでくれるのか。 お客様がずっと買ってくれるようになるには、どうすればいいのか。

お客様を動かす行動経済学のフレームワークを用いた、私が体験したこと、クライアントが成果を出した事例なども紹介していますので、利益を出すヒントになるはずです。(「はじめに」より)

こう語る著者は、マーケティングアイズ株式会社代表取締役。マーケティングとブランド構築のコンサルティング、社員研修などによって定評を得ている人物です。

そんな本書のなかから、きょうは5章「お客様がリピーターになりたくなるのは『どっち』?」に焦点を当ててみましょう。自社の商品やサービスに対する「リピーターづくり」について解説したパートです。

「アマゾン」が利用者を増やすためにKindleをとても安く販売している理由はどっち?

X:電子書籍に価格を上乗せしているから

Y:創業者のジェフ・ベゾスの気前がいいから

答えはX。リピーターを生み出すレーザーブレード・モデル

「アマゾン」の電子書籍リーダー「Kindle」は1万円を切るモデルもあり、キャンペーン時には5000円以下になることも。スマホのアプリは無料ですし、タブレットとしては破格の安さ。

なぜこんなに安く販売できるのかといえば、アマゾンが売りたいのはソフト、つまりコンテンツだから。Kindleを買ってもらったあとは、電子書籍を継続購入してもらえばいいということです。

こうしたアイデアを採用している企業は、他にも数多くあるといいます。たとえば、「江崎グリコ」が展開している「オフィスグリコ」もそのひとつ。これは、オフィスにグリコのお菓子が入ったボックスを無料で設置し、食べた分だけ代金を払ってもらうもの。

定期的にグリコのスタッフが訪問し、代金回収や商品の補充を行うわけです。考え方としては自動販売機や富山の置き薬などと似ており、プリンターとインクの関係、あるいはネスカフェのアンバサダーも同様。

こうしたビジネスモデルは、「レーザーブレード・モデル」(または「ジレット・モデル」)と呼ばれているものです。語源になっているのは、ジレット者の使い捨てカミソリ

本体を買うと、消耗品の替え刃はジレット社のものしか合わないため、ずっと購入してもらえます。そのため、本体価格をギリギリまで抑え、替え刃で利益を継続的にえようという仕組みなのです。

昔からあるビジネスモデルではありますが、オフィスグリコが登場したときには驚きをもって受け取られたといいます。その理由のひとつは、お菓子の金額を100円均一にしたこと。

代金回収を容易にするという目的もあるでしょうが、もともと100円ではないお菓子もあるため、100円に合わせて量を調整したり、パッケージを工夫したりもしたはず。

もっと大きいのは、売り方にイノベーションを起こしたことです。「お菓子はスーパーやコンビニで買うもの」と、多くの人が長年思い込んでいました。

その思い込みを捨ててオフィス内でお菓子を変える仕組みを作り、お客様に「気軽に買える」「時短になる」などの新しい価値を提供したと言えます。(194ページより)

こうした思い込みは多くの企業、多くの商品で存在しているはず。そのため自社の強みを再定義し、お客様がどこに価値を感じるのかをじっくり考えなおし、新しいレーザーブレード・モデルを発想することが大切だと著者は主張しています。(191ページより)

「スターバックス」が気まぐれなお客様に利用し続けてもらうためにしている方策はどっち?

X:メンバーシップ・プログラム

Y:新商品を手書きポスターでアピール

答えはX。顧客関係のマネジメントはすべての企業の課題。

来店時や買い物ごとにスタンプを押してもらえるポイントカードのプログラムは、いまやすっかりおなじみ。スタンプが10個貯まったら1000円引きになる、プレゼントをもらえるといった仕組みを用意し、既存顧客の来店を促すシステムであるわけです。

「スターバックス」にも以前は、コーヒー豆などを買ったお客様用のポイントカードがありましたが、2017年秋から改めてメンバーシップ・プログラムを開始しました。それが、「スターバックス リワード(STARBUCKS REWARDS)」です。

ポイントプログラムなのに、あえて「リワード(報酬、褒美)」という言葉を使ったのは、スターバックスからの、「あなたにとってなにかいいことをご用意します」というメッセージなのだろうと著者は分析しています。

このプログラムは、「スターバックスカード」というプリペイドカードをウェブ登録することで参加可能(スマホアプリのデジタルカードにすることもできる)。

そしてこのカードで買い物すると、クラウド上に50円あたり「スター」がひとつ貯まることになります。最初はグリーンスターを集め、250スター集まると、その後1年間、ゴールドスターを集められるようになるのだといいます。

つまり、お客様を2段階に分けているということ。スターバックス側からすれば、プログラムに参加するお客様はすべて1回以上購入している既存顧客ですが、ゴールドスターになると優良顧客と言えるわけです。

ゴールドスターになるとグリーンスターは0になりますが、特典(リワード)を受けられるのはゴールドスターから。

たとえば150ゴールドスターでドリンク、フード、コーヒー豆などと引き換えられるリワードチケットを受け取ることができたり、コーヒーセミナーの先行予約ができたり、会員限定の商品やイベントなどの情報を受けられるということです。

つまり、リワードをもらうために何度も店舗に足を運びたくなる仕組みになっているわけです。お客様側としては、ゴールドスター会員だけの特別なサービスを受けることで、優越感を感じられます。(202ページより)

このプログラムの肝は、登録時にお客様にメールアドレスを登録してもらうこと。そのアドレス宛にシズル感溢れる新製品の写真、あるいは、指定された期間中にスターバックスカードで購入すると、なにかが当たるキャンペーン情報などを載せたメルマガを定期的に届けるわけです。

そうすることで、お店に足を運びたくなるようにしているということ。

それだけでなく、スターがクラウド上に貯まるということにも意味があるといいます。お客様は多くのお店のポイントカードを持っているため、財布がパンパンでどこにあるかわからなくなっているなど、きちんと整理できていないことが考えられます。

しかし、クラウド上でスターを貯めるシステムで、かつプリペイドカードであれば、お客様もちゃんと持ち歩いてくれることになります。スマホアプリであればなおさら。

また、プリペイドカードに残金があれば、スターバックスに行く動機づけにもなるはず。さらに、このプリペイドカードはネット上でチャージも可能。そればかりか自動チャージシステムを利用すれば、残金は永遠にゼロになりません。

もちろん、チャージ額もクラウドに保存されています。つまりスターバックスリワードは、メルマガやスマホアプリでリアル店舗とオンラインの複合を狙っているということなのです。

かといって著者は、すべての企業にアプリをつくったり、ポイントをクラウド上に集めたり、プリペイドカードをつくったりすることを勧めているわけではないそうです。

しかし、顧客との関係をよりよくマネジメントすることは、企業にとって大きな課題だともいうのです。

お客様は気まぐれです。たとえスターバックスのファンでも、ちょっとしたきっかけで別のカフェを選ぶこともあるでしょう。その気まぐれなお客様をできるだけ逃さず、リピーターとしてつなぎ止めるための方策が必要なのです。

さらに、お客様は忘れっぽくもあります。何とかして思い出してもらうために、お客様にとって有益なことを提供し続けて、来店を促す必要があります。継続的な購入を目的とし、お客様と常に関係を持ち続けることが大切です。(204ページより)

そのために必要なのは、お客様に情報を発信できる仕組みをつくっておくこと。たとえばポイントカードを作成する際にLINE IDを登録してもらい、新商品情報を知らせるという手段もあるでしょう。

美容院に行った数日後に「パーマのかかり具合はいかがでしょうか?」といったハガキが届くのも、お客様との関係をつなぐための仕組み。

「春のおすすめヘアスタイル」などと、定期的に来店を促すハガキを出すことにも効果があるでしょう。捨てられないポイントカードのようななんらかの仕組みを活用し、お客様との関係をマネジメントする必要があるという考え方です。

本書の最大の特徴は、異なる2つの事例を並列させ、クイズ形式で学べるようになっている点。そのため楽しみながら、お客様目線に立ったマーケティングのポイントを無理なく学べるわけです。お客様のニーズを理解したい人にとっては、格好の1冊であると言えそうです。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年10月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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