『「文豪とアルケミスト」文学全集第二期』刊行記念インタビュー 一家に一冊、「文アル」×新潮社第二期!

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「文豪とアルケミスト」文学全集第二期

『「文豪とアルケミスト」文学全集第二期』

著者
神楽坂ブック倶楽部 [編集]
出版社
新潮社
ISBN
9784103048732
発売日
2018/10/31
価格
2,420円(税込)

書籍情報:openBD

『「文豪とアルケミスト」文学全集第二期』刊行記念インタビュー 一家に一冊、「文アル」×新潮社第二期!

[文] 新潮社

DMM GAMES『文豪とアルケミスト』プロデューサー 谷口晃平
DMM GAMES『文豪とアルケミスト』プロデューサー 谷口晃平

昨秋、「文豪にまつわる歴史的新資料、ゲームとのコラボ本に掲載!」という異例さが話題になった『「文豪とアルケミスト」文学全集』。若い女性を中心に熱い人気が続いている「文アル」ですが、プロデューサー・谷口氏が『全集第二期』刊行に際して、文学への深い愛を語ります(!)。

 ***

――昨秋の『「文豪とアルケミスト」文学全集』発売を皮切りに、新潮文庫六冊のフル帯カバーコラボ、「文豪たちと新潮社」展の開催、そして今年は夏の「新潮文庫の百冊」で描き下ろしの太宰治とゲーム登場前のお披露目となった山本有三のイラストを使用したプレミアムカバー(『斜陽』と『心に太陽を持て』)など、多岐にわたって「文豪とアルケミスト」というゲームと新潮社はコラボレーションを実施してきました。

 中でも「文豪たちと新潮社」展の開催はやはり一番感動しました。二〇一七年十一月一日が「文豪とアルケミスト」の一周年にあたったのですが、その直前に「文アル」×新潮社のコラボレーションを記念して記者会見をしたことをよく覚えています。もちろん様々な文学館で文豪にまつわる展示が行なわれるなど、「文アル」と文学館とのコラボレーションも盛んです。しかし、いろんな文豪たちの、発掘された新資料が一堂に会するというのは実に壮観でした。そもそもこのゲームは文豪たちの関係性を描いてそれを楽しんでもらいたいというものですので、新潮社さんとの取り組みによって、ファンの人たちに空間ごと楽しんで貰える場が出来たというのは非常に良かったと思います。

――展示は『斜陽』の原稿をはじめ、文豪たちの生原稿や書簡類などが新潮社の関係者宅から発見されたことがきっかけでした。資料の一部を『「文豪とアルケミスト」文学全集』に写真で掲載したことも話題になりました。ちょうど一年たって、この十月末に『文学全集第二期』が刊行されます。

 一巻目が発売された時から、続編を待ち望むファンの声は届いておりました。文豪たちの作品や書簡などはもちろん各文豪の全集や『青空文庫』などのサイトでも見ることは出来ますし、開発チームもびっくりするほど深く調べ込んでいるファンにとっては「読んだことがある」作品が多いかもしれない。けれど、純粋にゲームで文豪に興味を持ったファンにとっては、作品が膨大にありすぎて一体どこから読んでいけばいいのか、とっかかりがわからないこともあると思います。この『文学全集』は文豪同士の関係性がよくわかる作品を選んで下さっているので、入門書としてすごく良いものだと思います。
 今回の『第二期』でしたら、私は特に第二章「詩人を友達にする方法」にある、北原一門(白秋、朔太郎、犀星)の詩や書簡、エッセイについてまとめている部分を読んでもらいたいですね。詩は膨大にあるので、ここをまずおさえればいい、というのが示されているのも良いですし、書簡の、ある種衝撃的な内容も彼らを知る上で是非読んでもらいたい。また、私は歴史好きなので第四章「日露戦争と文豪たち」に田山花袋「東京の三十年」が入っているのは個人的に凄く嬉しいです。歴史の授業や教科書などでは、年号や事実、その結果どうなったかという過程が書かれますが、そこからはその時代を生きた人たちの日常風景がどうしても抜け落ちてしまう。花袋のこの作品はそこが描かれているのが魅力的です。文豪の残した文章を通じて、その時代を生きた人たちのまなざしを追体験できる素晴らしさを感じて欲しいですね。

――谷口さんは昔から本好きと伺っています。

 ちょうど高校生ぐらいの時、それこそぼろぼろになるまで読んだ新潮文庫があって、それは芥川龍之介の『侏儒の言葉・西方の人』でした。小説というより自己啓発本みたいな、格言めいたものが短く列挙されている本ですが、中二病を拗らせていた自分にはとても響きました。さすがに書き写すまではいきませんでしたが(笑)。今読み返すと、読み込んでいた自分のことも思い出してだいぶ気恥ずかしいです。
 最近でしたら村田沙耶香さんの『地球星人』に衝撃を受けました。「文アル」における主人公、プレイヤーである特務司書には人物設定をしてありません。私自身がそうなのですが、予め規定してしまうと、どうしてもそちらに囚われて、文豪たちの関係性を楽しむことに集中出来なくなると思ったからです。村田さんの作品は、「自分の存在を意識したくない」という感覚のファンに刺さるのではないでしょうか。

「文豪たちと新潮社」展
「文豪たちと新潮社」展

新潮社 波
2018年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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