サスペンスが止まらない!「スリラーの帝王」待望の邦訳

レビュー

5
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これほど昏い場所に

『これほど昏い場所に』

著者
ディーン・クーンツ [著]/松本剛史 [訳]
出版社
ハーパーコリンズ・ジャパン
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784596550965
発売日
2018/10/17
価格
1,180円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

サスペンスが止まらない!「スリラーの帝王」待望の邦訳

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 アメリカ・モダンホラーの巨匠といえば、スティーヴン・キングとディーン・クーンツ。キングのほうは純ミステリーと銘打った退職刑事ビル・ホッジスの三部作も無事翻訳が終わり、相変わらずの驀進(ばくしん)ぶりだが、クーンツのほうはどうしたのと訝(いぶか)る向きも少なくないのでは。

 ごもっとも。そんな方々待望の新作が「スリラーの帝王、カムバック!」と帯でにぎにぎしく謳われた本書なのである。日本で訳書が出るのは何と二〇一一年以来だという。

 ホラーではなく、あえてスリラーと謳われたのは、本書も超自然なしの純粋スリラーだから。物語は、ヒロインのジェーン・ホークが誰かに追われているらしい姿から始まるが、追われているのではなく追っているのだ。四カ月前、海兵隊員の夫が「ぼくは何かがおかしい。早く。早くしなきゃ。早く死ななきゃならない」という不可解な遺書を残し突如自殺。その死に不審を抱き、国内で同じような自殺が急増している事実も突き止めた彼女は、FBIを休職して真相究明に乗り出したのだ。だがある被害者宅を訪れたところ、未亡人が聞き込みの合間に自殺、その後彼女自身も男たちに追われる羽目に。敵はドローンまで駆使して彼女を亡き者にしようと謀るが……。

 序盤からサスペンスを畳み掛けるクーンツ流健在! 連続自殺の真相については前のほうでヒントが与えられるが、FBIで鍛えられた捜査力を活かして調査を進めるジェーンの姿を追っていくだけでも充分スリリングだ。彼女は敵の目を欺くべく、愛息を親友に預けて走り回る。彼女が真相究明に熱くなるのはあるトラウマにも因るが、そうした母の悲劇、女の悲劇も物語の深みを増している。

 やがて明かされるおぞましき陰謀にも敢然と立ち向かうジェーンに幸あれ。本国アメリカでは、彼女のシリーズはすでに四作目が待機中とか。二作目以降の翻訳が待たれる。

新潮社 週刊新潮
2018年11月1日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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