「子育て」でイライラしないために大切なこととは?

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子どもが伸びるがんばらない子育て

『子どもが伸びるがんばらない子育て』

著者
山本ユキコ [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
芸術・生活/家事
ISBN
9784866800059
発売日
2018/10/06
価格
1,430円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「子育て」でイライラしないために大切なこととは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

子どもが伸びる がんばらない子育て』(山本ユキコ著、フォレスト出版)の冒頭には、こう書かれています。

「10か月になるうちの子が笑わない」と、私が主宰する子育て講座の会場に相談に来たママがいました。でも、遊んでみると、お子さんは笑うのです。むしろママの表情が硬く、まったく笑っていません。

子どもが笑わない原因は、子どもではなく、ママにあるようでした。 がんばりすぎて余裕をなくしてしまったママが、自然に笑える余裕を取り戻せれば、と思ってこの本を書きました。(「はじめに」より)

著者自身、そのような状態を過去に経験してきています。1人目の子どもができたときには「仕事も子育てもがんばらないといけない」と努力したものの、ついイライラしてしまい、なかなかうまくいかなかったというのです。

そこで子育ての本を読んだり、発達や遺伝の研究や育児に関するデータを見たりした結果、あることを知ったのだとか。

学問の世界では「子育て中の母親は怒って当たり前」「完璧は目指さずにがんばらない方がむしろよい」。そんなことが言われていたのです。学問的なことを知れば知るほど、子育てはもっとがんばらないでいいのだと思えてきました。(「はじめに」より)

そのような考え方を、子育て中の親や保育士向けの講座として行うようになった結果、大きな反響があったのだといいます。子育て中のお母さんに向けて書かれた本書も、そういった実績のなかから生まれたものです。

ここで伝えたいのは、「子育ての本質を大切にするために、そのほかはがんばらない」という賢さを手に入れることだといいます。きょうは、第4章「イラッとしたらがんばらない」に注目してみたいと思います。

笑顔がないときは「がんばりすぎ」

母親が無表情だと、赤ちゃんが混乱して泣き出すーー。そんな心理学の古典的な実験を再現した動画がYouTubeにアップされ、拡散されていたことがあったのだそうです。なかには「母親は、笑えないときも口角だけは上げていて」とコメントつきで拡散するメディアもあったといいます。

しかし、それを見た著者は、母親に表情まで気軽に強要する人たちに対して、言いようのない怒りが湧いたと振り返ります。

母親が表情豊かでいられるなら、それに越したことはないです。しかし、母親が無表情とは、どういった状態でしょう? どう考えても、がんばりすぎて疲れ切った状態です。

無表情になるほど追い詰められたら、やるべきことは作り笑顔を意識することではなく、まずは、自分ががんばりすぎていることに気がつくことです。(85ページより)

もちろん、子どもがかわいらしいことは間違いありません。しかし子どもがいると、自分のペースで生活することが難しくなるのも事実。数時間なら楽しいでしょうけれど、24時間365日ずっと一緒にいると、耐えられなくなってくることもあるということです。

もともと、誰かに合わせた生活をすることが苦手だったという著者も、1人目の子どもを育てているときは毎日イライラしていたのだそうです。「毎日ギリギリに張られた精神の糸を、子どもやご主人にぐりぐりと踏まれるような気持ちだった」と、当時の気持ちを表現しています。

そして、そんなときに「自分の気持ちをコントロールしなくてはいけない」と思い込み、しかし、できずにイライラして子どもを怒鳴り、また落ち込むという悪循環に陥っていたというのです。

しかし、そんな経験があるからこそ、「もしもそんな気持ちに共感する人がいるなら、その人は気持ちのコントロールのとらえ方を間違っている」と断言できるのだそうです。怒ってしまったり、コンディションの悪い状態のときは、その気持ちを普通に戻さなくてはならないと思ってしまいがち。しかし、それは違うというのです。

子育て中の母親が怒りの気持ちに飲み込まれてしまったら、その感情をうまくコントロールすることは不可能になります。

怒りは変化を促すための力にはなる可能性がありますが、そうはいっても、いつも怒っている状態にあるとしたら疲れてしまうわけです。そのため、怒りに陥る前に手を打つことが大切だということ。(85ページより)

子育てでイライラしない方法

では、子育て中に感情をコントロールするためにはどうしたらいいのでしょうか?

著者によれば、それは「なんでもないときの気持ちを、ほんのり幸せな気持ちに上げておくこと」なのだそうです。「めちゃくちゃ楽しくてうれしい」というような気持ちに自分を持っていくと、結果的には疲れてしまうもの。

そこで、「ほんのり幸せ」という程度の状態にいることが秘訣だというのです。

この「ほんのり幸せ」な気持ちが、子どものお世話が可能な、気持ちに余裕のある状態です。

「ほんのり幸せ」が、少しでも落ちて「少しイラっとするけど、耐えられる」状態になりそうになったら、がんばらない。まずは自分の元気を回復しましょう。(87ページより)

基本の気持ちが「ほんのり幸せ」であるなら、夫の失言や赤ちゃんのための予定変更など、気持ちを苛立たせることが起こっても「少しイラっとするけど、耐えられる」状態で持ちこたえることは可能になります。

しかし、常にそんな状態だったとしたら、ちょっとしたアクシデントが起こっただけで、すぐにコントロール不可能な「怒り」の気持ちに飲み込まれてしまうことになるわけです。

基本的に、子どもが突発的に泣いたり、夫の気が利かなかったりというような「他者の行動」はコントロールできないもの。

それどころか、「子育て中に怒りに陥ってしまった自分の気持ち」をコントロールすることも不可能です。だとしたら、「コントロールできないものは、どうやってもできないのだ」と諦めるのが得策。

子育て中の「いっぱいいっぱい」の時期は、できないことを無理にがんばってさらに落ち込むより、コントロール可能な「普段の気持ち」を意識することに集中するほうが効率的だという考え方です。(87ページより)

イライラしそうになったら、お世話が交代できる時は交代する。家事はしないで休む。子連れの時でも、自分の好きなこともする。休息と気分転換を上手く取ってください。

普段の気持ちの変化に繊細に気をつけ、がんばりすぎないこと。自分をほんのり幸せにさせ続けることを意識するのです。(88ページより)

まずは大人が補充すべきこと

子どもの成長に必要なものは、「適度な睡眠・適度な食・適度な清潔・適度な愛」。しかし、これらは子どもだけでなく、大人にとっても毎日欠かすことのできないものだと著者は主張しています。

自分にないものを子どもに与えることは、短期的には可能だったとしても、長期的には不可能。しかし、子育ては長期戦です。だからこそ、子どもを見る親が、まずは睡眠・食・清潔・愛を補充することを心がけるべきだというのです。

保育学の大規模調査では、母親が元気であることは、赤ちゃんの発達によい効果があり、逆に、母親のうつ的な性格傾向が高まると、子どもの発達のリスクになることが明らかになりました。

母親が元気なら、子どもの変化に気がつき、適度なお世話が上手くいくからです。(92ページより)

母親が睡眠をとり、栄養のある食事ができて、お風呂に入ることができて、一緒に子育てする仲間が周りにいて、「わかるよ」と共感してもらえる。そんな状態であれば、きっと元気でいられ、適度なお世話も無理なくできるということ。

そうでなくなれば、徐々に元気がなくなっていき、子どもの変化に気がつけず、「適度な睡眠・適度な食・適度な清潔・適度な愛」を与えようとがんばっても、そのうちがんばれなくなってしまうでしょう。そして、それが子どもの発達のリスクになってしまうわけです。

そこで、子どものためにも、自分自身の元気の補充をすることが必要になってくるわけです。逆にいえば、子育ては「適度な睡眠・適度な食・適度な清潔・適度な愛」さえあれば、あとはそんなにがんばらなくてもかまわないのだと著者は言うのです。 (92ページより)

タイトルからもわかるとおり、本書はマンガと文章で構成されています。それは、子育て中で文章を読むのが大変な人にも要点が伝わるように、という思いが著者のなかにあるから。

そのため無理なく、子育てについての大切なことを学ぶことができるわけです。読んでみれば、子育てのストレスから解放されるかもしれません。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年11月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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