『民主主義の死に方』 スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット著

レビュー

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

民主主義の死に方

『民主主義の死に方』

著者
スティーブン・レビツキー [著]/ダニエル・ジブラット [著]/濱野 大道 [訳]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784105070618
発売日
2018/09/27
価格
2,700円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『民主主義の死に方』 スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット著

[レビュアー] 鈴木幸一(インターネットイニシアティブ会長CEO)

失われた寛容と自制

 「二〇一六年、アメリカ人はただ大衆扇動家を大統領に選んだだけではない。かつて民主主義を護(まも)っていた規範がすでに弱まりはじめていたタイミングで、その選択をしたのだ」

 民主主義の基盤となる三権分立を初めて説いたのは、モンテスキューの『法の精神』だが、著者によれば、憲法や制度だけで、民主主義は機能しない。米国が建国以来、さまざまな問題を克服しながら民主主義を維持できたのは、その制度を機能させるための共通の理念と慣習を「規範」という形でつくりあげていたからだという。対抗する政党間にも「寛容」と「自制」を基本とする「節度」があった。ところが共和党はそれを投げ出し、どんな手段を使っても勝つという戦略をとることによって、激しい二極対立の状況をつくり出してしまった。

 共和党支持者の中核である白人プロテスタントはおよそ200年にわたり、米国の選挙民の多数を占め、経済的、文化的に優位に立つ存在だった。その彼らが今や少数派となり、恐怖感と不安が共和党との一蓮托生(いちれんたくしょう)の道を選ばせた。トランプ大統領を生む土壌はすでにできていたのである。

 ラテンアメリカなどにおける「民主主義の崩壊」を研究テーマにしてきた著者は、「選挙というプロセスを挟んだ民主主義の崩壊は、恐ろしいほど眼(め)に見えにくい」と指摘する。トランプは大統領就任後、ロシア疑惑などが問題になると、選挙で選ばれた世界の独裁者と同じ行動をとる。「審判を抱き込む」「対戦相手を欠場に追い込む」「ルールを書き換える」。危惧は膨らむばかりである。

 歴史的事実として、多民族国家において、すべての集団に社会的、経済的な平等が実現したことはないが、米国は民主主義を護るために並外れた犠牲を払ってきた。その米国で、「民主主義がその内側から死ぬことを防がなくてはいけない」と著者は結んでいる。濱野大道訳。

 ◇Steven Levitsky,Daniel Ziblatt=共に米ハーバード大教授。ニューヨーク・タイムズ紙などへ多数寄稿。

 新潮社 2500円

読売新聞
2018年11月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加