『土 地球最後のナゾ』 藤井一至著

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7
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土 地球最後のナゾ

『土 地球最後のナゾ』

著者
藤井一至 [著]
出版社
光文社
ジャンル
自然科学/天文・地学
ISBN
9784334043681
発売日
2018/08/18
価格
993円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『土 地球最後のナゾ』 藤井一至著

[レビュアー] 藤原辰史(農業史研究者)

 いま土が面白い。植物や動物の遺骸をせっせと分解するミミズやキノコたちが、何千万年もかけて堆積(たいせき)させ生み出す生態系の芸術作品。地域によって、色も粘りも手触りも多彩で、育つ植物も異なり、人間の食生活までも変えていく。

 しかも、現代科学では不明な点も多い。動植物の遺骸や糞(ふん)は分解されて腐葉土、腐植と変化を遂げていくが、腐植は「複雑すぎて化学構造も部分的にしか分かっていない」。だから「土の機能を工場で再現できない」と著者は述べる。

 さらに、地球の表面に張りついているこの薄い層は、年々劣化し、アスファルトで埋められている。世界で最も肥沃(ひよく)な「土の皇帝」チェルノーゼムは、一万年かけて形成された分厚い腐植層を持つが、このうち半分が地力収奪型の近代農業百年のうちに失われたという。

 スコップ片手に、故郷の富山の水田土壌からカナダの永久凍土まで世界中の土と格闘する著者。心地よい自嘲と諧謔(かいぎゃく)が読者を飽きさせない。二一世紀の土壌をユーモアで救う若手土壌学者から今後も目が離せない。

 光文社新書 920円

読売新聞
2018年11月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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