『土 地球最後のナゾ』
書籍情報:openBD
食糧危機も環境変化もカギを握るのは土?!
[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
自然科学系の人の、元気な本を読むのが好きだ。遠い国まで出かけていき爬虫類と格闘したり、幻の昆虫を探したり。「バカやっている人」の輝きには抗しがたい魅力がある。もちろん、やっていることの全貌を知れば、それは決してバカな行いではない。
今回の新書はタイトル一発買い。藤井一至『土 地球最後のナゾ』。追いかける対象がもはや生物ですらない。ワクワクする。
世界の土は大きく分けて12種類(永久凍土、黒(くろ)ぼく土(ど)、泥炭土など)だ。そのすべてを知るため世界を股にかける著者は、ジリスに囲まれお昼のサンドイッチを奪われたり、巨大蚊柱の中で数百カ所も刺されたあげく蚊アレルギーに苦しんだりしている。それでも土への熱意を失わないのは、人類の存続を支えるのは土だという信念ゆえだ。著者の念頭にあるのは、地球上の人口100億人を養う力のある土壌なのである。
冒険談としてもおもしろく読めるが、大半のページにあるカラー図版を眺めているうちに、知らなかったことがザクザク学べる。たとえば、粘土は帯電しているため養分(カルシウムイオンなど)を吸着している。それを少しずつ、植物の根が放出する水素イオンと交換していくのだ。土の養分ってそういうことなのか!
なんだか自分がめきめき賢くなる(気がする)。食糧危機は土から解決できるはず。砂漠化などの環境変化も、土がカギを握っている。これこそ一生を懸ける価値のある夢ですね。