団塊ジュニア世代の「介護離職」はさらに増大する? 「親の介護」には早めに備えておこう

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そろそろはじめる親のこと

『そろそろはじめる親のこと』

著者
大澤 尚宏 [著]
出版社
自由国民社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784426124496
発売日
2018/09/21
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

団塊ジュニア世代の「介護離職」はさらに増大する? 「親の介護」には早めに備えておこう

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

そろそろはじめる親のこと』(大澤尚宏著、自由国民社)の冒頭には、次のような記述があります。

「本書のタイトルが気になった!」という方は、おそらく高齢期を迎えた親を持つ、40歳から50歳前後の子世代=「オヤノコト®」世代ではないだろうか。

最近では、「オヤノコト」世代が集まれば、高齢の親のこと、家族やパートナーとの「これから」のこと、介護離職への不安などが話題にならないことはない時代になっている。

今や、介護で仕事を辞める人は年間で10万人を超えているが、数年前まではまだ話題に上ることが少なかったこの問題、ここ2~3年で誰もが気になり、直面する、一般的で大きな悩みになってきた。

さて、2021年には、団塊ジュニアが50代に入る。 そして、2024年に、団塊世代全員が75歳に突入する。 まさに、「50代の子どもと70代後半(後期高齢者)の親」が平均的な親子という時代が、もうすぐそこまで来ているのだ。(「はじめに」より)

著者は、ひとりでも多くの「オトナ親子®」(団塊ジュニアと団塊世代の親子)を笑顔にすることをミッションにしているという、株式会社オヤノコトネット代表。

団塊ジュニアはきょうだいが少なく未婚率が高いため、40~50代の息子、娘と高齢の親だけで暮らす家族形態は今後増え続けるだろうと予測しています。

そのことを踏まえれば、2020年前後には団塊ジュニアの介護離職が増え、日本社会の大きなリスクになることは間違いないといいます。

そればかりか、介護保険のサービス抑制傾向などを併せて考えれば、働きながら親の介護をする人が増え、企業経営に大きな影響を与える可能性もあるとも。

そんななか著者が強く感じているのは「備え」の大切さ。多くの子世代が「うちの親に限って…」と楽観しているのが現状ですが、親が70代に入ったら「確実にくるその日」という覚悟で準備するべきだというのです。

ちなみに著者自身も「オヤノコト」世代。高齢期を迎えた親をどうケアしたらよいのだろうかと悩んできたのだそうです。

そこで、「親のこと」「老後のこと」に関する信頼できる情報を提供したいという思いで、2016年9月2日から「夕刊フジ」上で「『その日』は突然やってくる。介護離職に備えよ」というコラムを連載してきたのだとか。本書は、そのおよそ2年分に記事をまとめたものです。

第1章「親をめぐる世の中の動き」のなかから、いくつかを抜き出してみることにしましょう。

親が70歳過ぎたら「健康寿命」を考えよう

「2025年問題」をご存知でしょうか? 冒頭でも触れたように、2024年には団塊の世代(1947~49年に生まれ、合計出生数800万人を超える世代)が75歳に突入しますが、全員が75歳に到達するのが翌年の2025年だということ。

そのとき、後期高齢者人口は約2200万人にまで膨れ上がり、全人口の4人に1人という超高齢化社会になると懸念されているわけです。

一方、団塊の子ども世代である団塊ジュニア(1971~74年のベビーブームに生まれた世代)は現在42~45歳。

彼らは2025年に全員50歳を超えていることになりますが、実際にはいまから5年後、40代後半から50歳になる2020年ごろに、彼らの介護離職が一気に増える可能性が高いと著者は推測しているのだそうです。

つまり、東京五輪のときにはすでに、介護離職が社会に大きな影響を与えているであろうということ。

なお、ここで知っておきたいのが「健康寿命」。2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念で、「健康上問題はなく自立した日常生活を送れる状態」のこと。

日本人の平均寿命は男性81.09歳女性87.26歳ですが、健康寿命はそれぞれ72.14歳74.79歳。つまり平均寿命から健康寿命をマイナスした期間が、「なんらかの介護が必要な期間」ということになるわけです。

そこから逆算すると見えてくるのが、団塊ジュニアが親の介護を始めるのは2020年ごろだということ。生産労働人口が減るなかで、働き盛りの団塊ジュニア世代に介護離職者が増えれば、やがて企業の存亡にも関わる問題にもなるのは必至です。

ところが現実的には、ほとんどの人が具体的な行動を起こしてはいないもの。しかし、元気だった親が突然、要介護状態になることは珍しくないといいます。

例えばこんなケースもある。専門商社勤務のAさん(50代)ご夫妻は10年計画で貯金をし、長男が社会人になる節目に、夫婦での長期旅行を計画していた。

が、まさに10年目のその年、親が倒れ要介護状態になってしまった。 Aさんの実家は地方。介護を分担できるきょうだいもいないため、公的介護保険だけでは足らず、海外旅行貯金を介護費用にあてることになった。

週末は介護のため会社から実家に直行、月曜の朝にそのまま出勤という生活を数年続けた結果、離婚の危機にまで陥った。

「親が年をとるのは当然なのに、介護のリスクを考えたこともなかった。意識くらいしておけば…」とAさんは後悔している。(20ページより)

決して他人事ではないだけに、できれば親が70歳、遅くとも75歳を過ぎたら、健康管理や生活環境を見なおし、健康寿命を延ばすことを親子で考え、実践しておくべき後著者は主張しています。(19ページより)

親の加齢にともなうリスク対策はお早めに

「親は確実に年をとる=介護や認知症のリスクが高まる」という認識のもとに、積極的に情報を集めて備えている人は少数。

オヤノコトネットの調査でも、対策をしているという40~50代はわずか16%程度しかいなかったのだそうです。しかしそれでも、加齢の伴うリスクは、いつでも誰にでも突然降りかかってくるもの。

建設会社勤務のTさん(40代)は、東京都内で妻子と暮らしている。関西に住む両親は2人とも元気だったので、「親のこと」については何もしないまま過ごしていた。

だが、ある日、母親から「お父さんが倒れた」と電話を受ける。庭に出た父親がいつまでも戻ってこないので様子を見に行ったところ、庭先で倒れているのを発見。あわてて救急車を呼び病院へ。一命は取り留めたものの、麻痺が残り、リハビリ生活を余儀なくされることになった。

さらに、困ったことが起きた。今まで、毎週の買い物は父親が運転するクルマで買い出しに行っていたのだが、リハビリ中の父親は当然運転できない。困り果てた母親はTさんに「原付を買うか、自分でクルマを運転して買い物に行くか、どうしたらいいか?」と相談してきたのだ。

恒例のペーパードライバーである母親に運転はさせたくない。原付に乗るなんて、もってのほか。どちらの案も「やめてくれ」と言ったが、代替案は見つからなかった。(22ページより)

そこで困り果てたTさんはオヤノコトネットに相談。その結果、勧められた電動アシスト付きの高齢者用3輪自転車を購入してことなきを得たのだといいます。

しかし、こうした商品の情報は少ないため、介護離職にまでは至らなくとも、親の病気や事故にともなう問題を解決できずに悩む人は多く存在するといいます。

そして、そういう人は今後ますます増えるだろうと著者は予測しています。しかも、母親が元気だったからうまくいったTさんの場合は、むしろレアケース。母親が介護疲れで倒れてしまうことも想定しなければならないわけです。

ちなみに日本では「育児・介護休業法」によって介護休業、介護休暇をはじめ、時短勤務などが定められています。

ところがオヤノコトネットが2015年3月に調査したところ、「親の介護を会社に相談しづらい」「相談できない」という人は80%もいたという結果が出たそうです。(22ページより)

団塊ジュニア世代が迎える「2017年問題」

先ほど「2025年問題」をご紹介しましたが、それとは別に「2017年問題」というものもあるのだそうです。

人口のボリュームゾーンである団塊世代の最初のグループが70歳を迎えるのが2017年。それにともなって、その子ども世代である団塊ジュニアに介護離職の問題が顕在化してくると推測されることから、2017年問題と言われているというのです。

事実、要介護出現率をみても、65~69歳の人は3%ですが、70~74歳になると6%と2倍に。そして、75~79歳ではさらに2倍の14%。そのため、団塊の世代全員が75歳を迎える2025年は「2025年問題」と呼ばれているということ。

つまり、2017~2025年の約8年の間に介護が必要になる人が急増すると推測されているわけだ。その介護を担うのが、前述の団塊ジュニア世代。

この世代は労働生産人口的にもボリュームが大きい層だが、その貴重な世代から介護離職が続出すれば、企業には大打撃となることは既に述べたとおりだ。

しかも、団塊ジュニア世代は①兄弟が少ない②生涯未婚率が高い③共働きが多い④晩婚化・高齢出産化よりダブルケア(親の介護と子育ての双方を同時に担う)ことも多いーーと考えられている。(28ページより)

育児・介護休業法が2017年1月1日から改正施行されましたが、「まだ親の介護は先の話だろう」と油断していると、自分も会社も大きな損害を被ることになる可能性があります。

オフィスの同僚や部下にも、団塊ジュニア層が多いはず。そこで、そういう部下には、早めに親のケアをするようにアドバイスしておいてほしいと著者は記しています。

著者自身、企業の経営者や人事担当者から「介護のことまでは、なかなか手が回らない」と言われることも少なくないといいますが、準備しておかないと本当に危険なことになるというのです。

自分の周囲で介護離職をした先輩や同僚、部下はいないだろうか? 

離職までいかなくとも、「親を介護しているために転勤はできない」と言う人は確実に増えているし、親の介護のためという本当の理由を隠して辞めていく人もまだ多い。

「自分だけは大丈夫」「ウチの会社は大丈夫」という油断をせず、「転ばぬ先の杖」という意識が大切なのだ。(30ページより)

2014年9月の『日経ビジネス』で「隠れ介護1300万人」という衝撃的なタイトルの特集が組まれたことから、この問題は一気に表面化したのだそうです。

しかし、それもすでに2年半前のこと。そのため、2017年問題に該当する人は、すぐに準備をしてほしいと著者は訴えています。

以後の章では、「親をめぐる制度」「親の健康」「親の暮らし」「お金のこと」など、「親のこと」「老後のこと」についての大切なことをさまざまな角度から解説しています。

著者が言うように、親の問題は誰にでも訪れること。だからこそ、やがて訪れる日のために、本書でしっかりとした知識をつけておきたいものです。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年11月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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