親から子へ、子から孫へ。20年後のわが子に贈る「メッセージブック」ができるまで

インタビュー

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BIRTHDAY BOOK 20歳のあなたへ

『BIRTHDAY BOOK 20歳のあなたへ』

著者
谷口香織 [編集]/白井匠 [イラスト]
出版社
雷鳥社
ISBN
9784844137504
発売日
2018/11/17
価格
2,200円(税込)

親から子へ、子から孫へ。100年残したい「贈る本」ができるまで

[文] 雷鳥社

2018年11月に刊行された『BIRTHDAY BOOK 20歳のあなたへ』(雷鳥社)。生まれてから20歳になるまでの子供の成長を1年ごとに記録して、20歳になった我が子にプレゼントするというメッセージブックだ。「ギフト」というテーマを徹底的に意識したという本書は、単なる手帳やノートではない。ページをめくってゆくと、そこには書きこむ前からうっすらと物語が流れ、旅立ちのラストには思わず目が潤んでしまった。
「本」でありながら「本」ではない、このこだわり抜かれた作品が誕生するまでの背景について、本書の担当編集者である野良猫編集室の谷口香織さん、イラストを担当した白井図画室の白井匠さん、ブックデザインを担当した小林祐司さんの三人にお話を伺った。

小ぶりなA5サイズは、子供に見つからないように隠しておけるため
小ぶりなA5サイズは、子供に見つからないように隠しておけるため

 ***

「今の私たち」にしか作れない本

――この企画はどういうきっかけで思いついて、実際どうやって形にしていったんですか?

谷口 去年の8月ぐらいに、書店でぶらぶらしていて。せっかく子供が生まれて親になったので、今のこの感覚で何か面白い本作れないかなと思っていました。そうしたら他社が出しているバースデイブックを見つけて、ハッと神が降りてきて。育児日記はたくさん見たことがあったけど、書くのは一年ごとでよくて、それをさらに将来子供にプレゼントするという発想がなかったので、これは面白いなと。とりあえずその本を買おうかなと思って中身を見たら、ちょっと可愛すぎて。20歳になった子供にプレゼントするには、少しキュートすぎる気がしたので、もう少しシックで大人っぽい本が欲しいと思って企画しました。「これは絶対に売れる」って、すぐに会社に電話しようと思ったぐらい興奮しちゃって。その時点ですでに、絵は白井さんがいいと思っていました。

――なぜ白井さんがいいと?

谷口 白井さんもお子さんが生まれたと聞いていたので。この本はどこかの誰かのために作るよりも、自分の子供のために作りたいっていう方が、いいものができる気がしたので。同じようにお子さんがいる方と作りたいと思っていました。それで、ひとまず白井さんに会って話をしました。白井さん、当時お子さんが1歳でしたよね。 だから同じぐらいのテンションで「それいい!」って言うと思ったんですよ。そしたら意外と冷静で。

白井 ああ~、そうですか?

谷口 私、凄いテンションで喋っちゃって。だけど白井さんは意外と落ち着いていました。でもその前に育児トークをめちゃめちゃしたんですよね。その後に類書を見せて、「こういう本があるけど、私はもっと違う本を作りたい」みたいな話をして。その場でOKだったんですっけ?

白井 そうですね。

谷口 私が今まで仕事をしたデザイナーさんは独身の方が多かったので、「お子さんがいる方で、良いデザイナーさんいませんか?」ということで、そこから白井さんに小林さんを紹介してもらいました。そのとき小林さんがちょうど個展をやっていたので、私はその個展に何も名乗らず知らんぷりして行ったんです。

小林 個展の告知とかも全然できなくて、ほとんど身内の集まりみたいな感じだったので、「あれ? 誰か知らない人がきている。この人は……?」ってなりました。

谷口 最初小林さんに、「ここの建物の関係者ですか?」って言われました。

小林 びっくりしちゃって。

谷口 それで、正体をばらしました。たぶん小林さんの個展の話も少ししたけど、自分はこの本のことで頭がいっぱいで、「実は小林さん、こういう本が作りたくて……」と、マシンガントーク。人の個展なのに。「小林さんにデザインして欲しいんです」って伝えたら、私が思っていた通りの反応でした。「いいじゃないですかー!」みたいな。話してみたら、小林さんはちょっとロマンチストな感じがしました。この本って親のエゴに近いので、ちょっとロマンチストで芸術肌の小林さんと、淡々としている職人肌の白井さん、とにかく熱さが売りの私が組んだら、きっと面白い本ができると思って、作ることになりました。

バランスの取れた三人だからこそ生まれた作品

――今回、このチームで本を作ってきて、お互いの印象はどうですか?

白井 谷口さんはやっぱり人と一緒に作っていくのがお好きな方だなって言う印象がありますね。荒削りな自分の思考をみんなで磨いていって、本を作っている。あとは絵の雰囲気とか、考え方とか、デザインに対してもそうだと思うんですけど、割とやりたいことを認めてくれる。懐が広いって言うんですかね。絵描きやデザイナーという作り手側としてはいい仕事ができる編集の方ですね。やっていて楽しいです。

小林 出会いがそういう形だったんで、凄い熱量を感じる。いい意味で凄く楽しかった。やっていてこちらの気持ちを上げてくれる感じの人。

谷口 これ、いろんな人に言っといてください(笑)

――では、小林さん、白井さんの印象は?

小林 先ほど谷口さんもおっしゃったように、白井さんの冷静な部分が結構グサって刺さるところがあって。

白井 本当ですか。すみません。

小林 いや、全然悪い意味ではなくて。たとえば巻末の文章の話をしていた時に、「自分がもし子供で、これをもらったらちょっといやだ」みたいな。

谷口 巻末に「あなたのたくましくなった背中を……」という文章があるのですが、ここがラフ段階では「これからもよろしくね」だったんです。その時に白井さんが、「それって、これから介護よろしくね」に聞こえてちょっと重いかな、って。それは鋭かったですね。
 
小林 うん。確かにそうだなと思って。書いている側としては気分が上がっているから分からないけど、もらう人の立場になったときに、確かにこの文章だと重く感じちゃうかなと思って。その辺はやっぱり流石だなあと。

白井 僕、文章力とかまったくないですけど。

谷口 普通、書く人は編集者がいるから編集者と相談しながら作るけど、今回は編集者の私が書いているので、誰にアドバイスをもらったらいいのか分からなくて、結構不安でした。でもこのチーム内で、白井さんはイラスト担当なのに文章の方にもアドバイスをくれて、すごく心強かったです。小林さんは共感してくれるところが嬉しかった。

白井 小林さんは大学の先輩です。コースは違うけど。

小林 そうですね。グラフィックとかじゃなくて、建築系の方の学科で。

白井 大学卒業されてから本のデザインをされていて。谷口さんから本を作れるデザイナーさんを紹介して欲しいと言われたとき、谷口さんって「お洒落な本を作りたい欲」がある編集者なので、だったら小林さんぴったりだなと思って。キャリアも本のスペシャリストですし、展示会やったり、小説書いたりしていたこともあって。ただ作るだけでなくて、そこからさらに外側の、概念のあたりからも考えられるデザイナーさんだなという印象があったんで、今回ちょうどよかった。かつ人柄がもうね、ほんと全てを包み込んでくれるような。

谷口 本当に優しい。

――確かに柔らかい感じですね。シルクのような。

小林 初めて言われた(笑)。バランスは上手く取れていたと思いますね。

一度完成したイラストをすべてボツにした理由

谷口 子供向けの絵本を見ていると、最近の本って「ここで笑ってね」がいろんなところにちりばめられている。子供はきっとそこまで分からないけど、気づくと嬉しくなる要素が大人を喜ばせる。この本にもポイントポイントで遊びを入れたくて、その打ち合わせもしたんですよね。

白井 しましたね。

谷口 こんな良いチームですけど、私が一回やらかして。白井さんのイラストがもともと好きなのもありますが、初めに上がってきたイラストが本当に良かったので、「もうこれでいい」と思って、そのまま進めるつもりでした。でも改めて色々考えたら、やりたいことが増えてきちゃって、本当は下書きの段階でそれを伝えれば良かったけど、そのときは多分考えがまとまってなかったんですね。白井さんのイラストに感動しちゃって、ふわふわした状態だったから気づけなくて、一回清書を上げてもらった後に、もう一回全部やり直してもらいました。そのときの気持ちを白井さんにぜひ。

白井 一度目のラフを起こしたのが、確かこの辺。ラフをまず2案提案したんですよ。こっちがA案、こっちがB案。A案の方は可愛いものもありつつ、ときどき熊が登場する。B案の方はもっと柄寄りというか、単純に1枚の絵として可愛いものっていう感じで。A案が採用されて、そこからもう清書に入ったんですよね。そのあと修正が入って、そのときの気持ちですよね。気持ちって言われても……。

初期案のラフ
初期案のラフ

谷口 いや、これ本当にずっと聞きたかったんですよ。「あいつふざけんなよ」って感じですよね。

白井 まあ、もうちょっと話し合えばよかったですよね。この時に。そこは僕も「良いものができるだろうな」という熱によって、浅はかな部分もありました。ご指摘いただいていちばんハッとしたのは、お洒落さを残しつつ、世界観を残しつつも、やっぱり分かりやすく作らないと、ということ。

谷口 最初は熊の絵はときどき登場するだけでした。他の動物や植物とも交流することはなく、それぞれが単体のイラストとして完成度の高いものでした。

白井 一枚の絵としてね。

谷口 それで、修正後は毎ページに熊が登場しています。

白井 季節とともに熊が成長していくストーリーになっています。さらに細かい仕掛けがあって、実は色んな要素がほかのページにもちょっとずつ出てきて、「あ、ここ実はつながっているんだ」ってなる。再度出したラフのときにはまだないんですけど。

谷口 芋虫が出てくるとか。蛙が冬眠しているとかね。

白井 分かりやすさと楽しさを押し出して、もっと色んな人に手に取ってもらえるようにするべきだよなと。この本はたくさん売れて欲しいわけですし。

小林 最初は考えていたブックデザインも、もうちょっとシックめな感じだったんだよね。

谷口 そうでしたよね。もうちょっと大人っぽいっていうか。

小林 そこから若干シフトして、より間口の広い客層に、っていう方向になってきた。その辺はやっぱり一度イラストを上げていただいたからこそ見えた方向性かなって思いました。決して無駄ではなかった。

白井 無駄ではなかったと思いますね。

イラストに隠された並々ならぬこだわり

小林 僕が感激したのが、出てくる植物とかが……。

谷口 これね、これは感動した。

白井 たとえば熊が物を食べているときも、これヒグマなんですけど、実際にどういう物をヒグマが食べているのかなと思って。そういうのも調べています。

谷口 熊は順に大きくなって、季節は春夏秋冬春で終わっているんですよ。出てくる植物も、春だったら春の植物になっている。

白井さんが調べたという植物のスケッチ
白井さんが調べたという植物のスケッチ

白井 あと熊の生態と同時に、人間がどういう風に成長してくかっていうのも調べて、人間と熊の生き様がちょっとリンクする感じにしようと思って考えました。それも、あの大きな修正があって、より考え方がはっきりしたからこそ、次のフィールドに進めたかなって思っているので。

谷口 この本って、記入する本だから、いわゆるノートじゃないですか。でも今回書籍として出版するので、一冊の本として物語っぽい要素が欲しくて、巻頭巻末にストーリー展開を載せたり、熊ちゃんが成長していくみたいなドラマを入れたりして。でも白井さんがここまでやってくれているとは知らなくて、初めて聞いたときはかなり感動しました。

100年残る本にするための「気づかい」

谷口 たとえば0歳のページで熊の子供がお母さんのおっぱいを飲んでいたら、母乳が出ないお母さんが見るとショックかもしれないし、熊の親子を三人ではなく二人にしたのも、母子家庭や父子家庭の人が増えているから。表紙は、小林さんは最初の打ち合わせから「布張りがいい」って言っていましたよね。布で箔押しをしたいと。この辺はもう予算との戦いですが。プレゼントする時点で20年も経っていて、その子供が次の20年持っておくと考えると、100年ぐらいは持たせたい。その耐久性を考えたときに、やっぱり布張りがいいかなって。もちろんお洒落さもあるけど。箔押しの色も白にするかシルバーにするかの二択で、小林さんは白派、私はどっちもよくて選べない、白井さんはシルバーでしたよね。

白井 そうですね。僕と妻はシルバーでしたね。

谷口 私も周りの女の子やお母さんたちに聞いたりして、よりプレゼントっぽいのはシルバーかなあ、と。そういうときに小林さんは譲ってくれるんですよね。

小林 人の意見ってあんまり左右されちゃうとぶれるんで、普段はなるべく聞かないようにしているんですけど。今回に限っては使う人が女性なので、自分じゃどうしても把握できていない部分が多いと思って、みんなの意見を聞くようにしました。

布張りに銀の箔押しをした本体の表紙
布張りに銀の箔押しをした本体の表紙

谷口 あと、友だちに一回見てもらったら、写真や子供が描いた絵を貼るページに、何かワンポイントがあったらいいかな、ってアドバイスをもらって。そこからパラパラ漫画の案が出てきました。それもストーリーがある方がいいってことで、芽が出て、鳥がきて、枯れちゃっているように見える時期もあって。17歳ぐらいって中二病だし。思春期で挫折も味わう年齢なので、お母さんが書くときも「枯れちゃっているときがあってもいいんだよ」というメッセージを込めています。

白井 パラパラ漫画、入れてよかったですよね。

谷口 これって最初から思いついていたわけじゃなくて、あとから盛り込んでるので、それをお二人が反映させてくれたのはありがたいなと。お陰で自分でも絶対に買いたい本になったので、自信を持っておすすめできます。

白井 やっぱりお母さんにそう思ってもらわないと。それが一番。

白井 質問のテキストの選択も重要なお仕事だなと思うんですけど、その辺も何か意識されたんですか?

谷口 「世の中のできごと」と、「父と母の年齢」は絶対に入れようと思っていました。20年後に子供が見たときに、「自分が3歳のときって、親って何歳だったのかな」って分かるように。私は30代で出産しているけど、親って20歳前半で出産して子育てしているから、「25歳のときの自分は全然遊んでいたなあ」。そういう比べ方ができたらいいなと思って。「世の中のできごと」には色んなことが書ける。3歳の時の赤ちゃんの成長とともに、「羽生結弦がオリンピックで2大会連続の金メダルを取った」なんて書いてあると、急に時代が分かるっていうか。世の中の基準みたいなものがあると、より他の部分が生きてくるかなと思います。

白井 これは子供側にとってありがたいことですよね。

谷口 子供に将来プレゼントするって考えると、いいことだけ書きたくなっちゃうけど、驚いたことや困ったことも必要。私自身、「気に入らないことがあると噛みつく」って親が母子手帳に書いていたのが凄く面白かったので。1歳くらいの子供って、普通にうんちを壁に投げたりするんですよ。あれ? うちだけ? イヤイヤ期で、スーパーの棚から物を全部下に落とすとか。そういう困った出来事も書いてある方が、より現実っぽくて面白いので、よくなかったことでも書いて欲しいです。あとは中学生のお子さんがいる友だちから、女の子って中学生ぐらいになると親に体重を教えてくれないって聞いて。でも、靴のサイズだったら玄関に行けばすぐ分かるから、いいんじゃない? と言われ、「足のサイズ」という項目も追加しました。

小林 表4のコピーにもありましたけど、この本をもらった子供が将来子供を産んだ時に、また違う意味でこの本が効果を発揮するんじゃないのかなと思います。三世代にわたって使える本になるんじゃないのかなって。

白井 あと就活するときに使えるかもしれないですね。自分ってどういう人間なのかって。

書いてもいいし書かなくてもいい。あとからまとめて書いてもいい

――こういう本や日記って、最初はテンションが上がって書くと思うんですけど、そのうち続かなくなるイメージがあります。その辺りは続けられる工夫がありますか?

谷口 毎日書かなくていいところ。毎日は自分でも書けないし。0歳から11か月までは、子供が変化するので書くこともあるんですよ。1か月ごとに全然違う変化があって、つかまり立ちしたとか歩き出したとか、歯が生えてきたとか。それが1年ごとだと、「あれも書きたいのにこれも書きたいのに」みたいになるから。あとは忘れないように、誕生日っていう節目ごとにしています。絵も実際とリンクさせているので、3歳の絵を見ながら自分の子供の成長を思い出してもいいと思います。

白井 途中でやめてもいいと思いますけどね。最終的に「えー、書いてないー」みたいに言われても、「てへへ」という感じで、「お父さんとお母さんらしいな」。そういうやりとりがあってもいい。

谷口 そうそう、お休みはむしろあってもいい。中学生くらいで子供にムカついて、「こんなのやってられない」って時もありますよね。もちろん「書きたくない」って文字で主張するページがあってもいいし、白紙が3年間続いたとしても、それはそれで面白い。最近、Twitterで「子供が小さいときにこの本が欲しかった」というコメントがあって、「振り返って書くのも結構泣けると思いますよ」って答えました。もうちょっとで子供が20歳になるお母さんが母子手帳を探したり、子供の通知表を引っ張り出したりして、あらためて子供の成長を振り返って書くっていうのもありかなって。

白井 それ結構楽しいんじゃないですか? 写真とか溜まっているわけだから。「最後だけど、まとめて書かれているけど、やってくれたんだな」って。嬉しいと思いますよ。

谷口 最終的に、自分の子供が20歳になった時に、自分って何をプレゼントするのかなって思って。上京や結婚で自分の元から離れていくときに、もちろんお金を渡すとか、電化製品を買ってあげるとかはアリだけど、それ以外で何か渡したいって気持ちがあります。

この本を一言で表すと

左から白井さん、谷口さん、小林さん
左から白井さん、谷口さん、小林さん

――では最後に、みなさんこの本を一言で表してください。

谷口 私、決まりました。「今の自分が欲しい本」です。

白井 一言かあ。難しいな。絵とか全体のストーリーとか考えさせてもらったんで、その視点から言うと、たとえば大変なことの方が多いと思うんですよね。人生もそうだし。子育てもそうだし。でもこの本を仕上げて見返しているときに、まるで「ああ、俺の人生も、私の人生も、なんかちょっと映画みたいじゃん。あんな酸っぱいことも苦いこともあったけど、通してみたら、人生悪くなかったんじゃない?」っていう風に思ってもらえたらいいのかな。それをまた次の糧にして頑張っていただいて、人生を照らすことができたらいいなと思います。

小林 子供が生まれて、自分の親のことも結構考えるようになると、改めて「あ、自分って一人じゃないんだな」って思うことが多くなりました。この本は「一人じゃない」ってことを確認できる本だなと思っています。

谷口 この本が100年残ったら、自分の孫が見る可能性もありますよね。そのとき「あ、おばあちゃんってお母さんだったんだ」って気づいて、そのときにつながっているんだなって確認できるのかも。

小林 自分の口癖が子供の口癖にもなっていたりするんですけど、よくよく考えてみたら自分の親も同じ口癖だったりして。この本を書いていくと、そういう発見ができるのかなって気がします。

谷口 最後に、ちょっと思い出したことがあって。少し重い話なんですけど、去年私の親友が亡くなったんです。前の日まで元気だったのに、突然死で。しかもその親友が妊婦さんで。妊娠6か月で、子供もお母さんも亡くなっちゃって。凄いショックで、今も全然整理ができていないんですけど。そういうこともあって、「自分が病気になったら子どもはどうなるんだろう?」ということも考えます。悲しいことだけど、私がもし亡くなったとしても、一年ずつ積み重ねていけば、そこまでの想いは伝わるだろうなあってことも、この本を作りながら思っていました。子育ては大変なことも多いけど、子供とがっつり関われる時間って実はそんなに長くないのかもしれないなって。だから、その日々がそう長くないぞって思うと、意外と乗り越えられるかなって思います。

取材/構成=望月竜馬

雷鳥社
2018年11月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

雷鳥社

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