“全米最優秀女子高生”育てた日本人ママ「子どもに本当に必要な教育は“非認知能力”を伸ばすこと」

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“全米最優秀女子高生”育てた日本人ママ「子どもに本当に必要な教育は“非認 知能力”を伸ばすこと」

[レビュアー] ボーク重子(ICF認定ライフコーチ)

ボーク重子さん
ボーク重子さん

 日本の教育システムが行き詰まっていることは、ずいぶん前から様々なメディアで報じられてきました。アメリカに住む私の耳にも入ってきたくらいですから、日本国内ではずいぶん議論されていたはずです。それでも、「子どもたちの未来のために本当に必要な教育」の改革に手をつけるまで欧米諸国から20年ほど遅れを取ってしまいました。
 とにかく学力偏重で、教科書の上にあるものをいかに記憶するか、計算をどう速くするか……が重視されてきたこれまでの日本の教育は、AIが多くの職を奪っていく世界において、意味を失いつつあります。
 それより、人間にしか持ち得ない能力を伸ばすことがこれからの教育の要になるはずです。それこそが「非認知能力」であり、文科省の2020年教育改革の核になるものです。
「非認知能力」とは、IQや学力テストなど数値で表すことができる能力ではなく、「やり抜く力」「自制心」「問題解決能力」「折れない強さ」「回復力」「コミュニケーション力」「想像力」「共働力」など、従来の学校教育では重視されてこなかった、いわば「人間力」のことです。
 アメリカでは1990年代に、それまでの学力偏重主義から「非認知能力」教育に大きくシフトし、人間力に溢れた子どもたちを育てることを重視した結果、多くの起業家、多彩なビジネスが生まれています。

 実は私自身が非認知能力を育ててビジネスを興した一人です。
 アメリカ人の夫と結婚してワシントンDCで暮らし始めた頃は、英語にも生活習慣にも自信がなく、何に関しても他人から「そんなこと無理だろう」と言われれば、そのままへこんでいました。
 しかし、娘の子育てを通じてこの「非認知能力」を学んでからは、自己肯定感を深め、現代アートのギャラリーを開くという夢を実現することができたのです。
 いまでは、ギャラリーの仕事は一段落し、ライフコーチとして執筆や講演活動が主になっていますが、新刊の執筆にとりかかる際に必ず読むのが、皆さんもよくご存じの『ハリー・ポッター』です。何度も繰り返して読んでいますし、もちろん映画も観ています。それでも繰り返し読む理由は、著者J.K.ローリングスさんの想像力を身近に感じるためです。シングルマザーで生活に困窮していた彼女が紙ナプキンの上に書いたのが『ハリー・ポッター』の物語のはじまりだったと言われていますが、実は、当初原稿を送った数十社以上の出版社から刊行を拒否されたそうです。それでも諦めずに活動を続けて世界的なベストセラーを作った彼女の「やり抜く力」「問題解決能力」「自己肯定感」などの「非認知能力」を思うと、私のモチベーションも上がりますし、人はあれほどの想像力を持っているのだと考えると、「私ももっとできるはずだ」と思えるのです。

 前述のように、娘の子育てを始めて「非認知能力」教育に出合いましたが、最初は本当に驚きました。娘が通った幼稚園・小学校には、教科書も宿題もありませんでした。教室では学齢の異なる子どもたちがおのおの好きなことをしていて、「こんなことをしていたら娘は大学に行けなくなる!」と不安になったものです。それでもこの学校の生徒たちのほとんどがハーバード大やコロンビア大など名だたる名門大学に進学しています。
 では、教科書の上の勉強をする代わりに何が行われていたのでしょう。それは、子どもたちに「自分が夢中になることを見つけさせる」こと、そしてそれを「お友達に説明して楽しさを共有する」ことでした。みんなの前で自分の「パッション」について子どもがプレゼンをするのはこの学校では日常的なこと。それは日本の学校ではあまり見られない光景かもしれません。
 そして、学校から帰ってきた子どもにお母さんが家でできること。それを今回『「非認知能力」の育て方』という新刊にまとめました。私が実際に娘と交わした対話や家族のルールのほか、実践的な話をご紹介しています。恥ずかしながら私の失敗談も正直に書きましたので、それも含めて読者のかたの幸せな子育てに活用していただけたら心から嬉しく思います。
 子どもだけでなく、これからの時代を生きるすべての人を幸せにする「非認知能力」について皆さんにお話しすることこそが、いまの私の最大の「パッション」です。

撮影:浅野剛

小学館
2018年11月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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