『海について、あるいは巨大サメを追った一年』 モルテン・ストロークスネス著

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海について、あるいは巨大サメを追った一年

『海について、あるいは巨大サメを追った一年』

著者
モルテン・ストロークスネス [著]/岩崎晋也 [訳]
出版社
化学同人
ISBN
9784759819717
発売日
2018/07/20
価格
2,808円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『海について、あるいは巨大サメを追った一年』 モルテン・ストロークスネス著

[レビュアー] 一青窈(歌手)

世界は謎で満ちている

 タイトル通り、この本は寿命が500年にも達するというニシオンデンザメを捕まえるまでの記録である。海好きでなくとも非常に楽しく読めるのでオススメである。人間が絶滅危惧種になるのはあと何年後なのだろうか。それを深海の魚たちは仲間同士で笑うのだろうか。海を知ることでこの宇宙の謎が解けるように思える一冊だ。

 <水分子を文字とするなら、海はおよそあらゆる言語を用いてこれまでに書かれたすべての書物を内包している>

 はるか彼方(かなた)、空の上方と海の奥底でシンクロしている部分は多々あり、似たような進化を遂げているのではないだろうかと説く著者は、歴史家であり、ジャーナリストである。深海に棲(す)むこのサメに、ある種の運命的な導きを感じ、親友の助けを借りて、ゴムボートひとつと、350メートル級のナイロン糸で釣り上げようと試みる冒険だ。

 自然破壊の余波をまだ、もろに受けていないノルウェー北部での彼の経験した一年は、実に豊かな四季の巡りを通して、私たちが何の生まれ変わりなのかを教えてくれる。

 物語の重要なハブであるオーショル・ステーションは元タラ肝油工場で、船にも性格があることや、工業の変遷やそれに伴う人間の生活様式、とりまく生物の生態はもちろん、満月と新月のあと72時間海流が遅くなることを指す言葉の存在を知った私は、アザラシのように深く眠っている息子の横でこの本を読んでいてワクワクし通しだった。

 世界はまだまだ知らない語彙(ごい)に溢(あふ)れており、楽しい謎で満ち満ちている。

 本文に注釈が付いていたので、わからない単語が出てきてもそのまま読み下せます。ストーリーが断絶されなかったので、物理的にも読みやすい本であった。イソギンチャクのような花丸!!! 岩崎晋也訳。

 ◇Morten Stroksnes=ノルウェーの歴史家、ジャーナリスト、写真家、作家。ルポルタージュで知られる。

 化学同人 2600円

読売新聞
2018年11月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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