相手と「信頼関係」を築くために覚えておきたい4つの基本

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心をとらえる60の法則

『心をとらえる60の法則』

著者
マーク・レクラウ [著]/弓場隆 [訳]
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN
9784799323861
発売日
2018/11/15
価格
1,540円(税込)

相手と「信頼関係」を築くために覚えておきたい4つの基本

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

人生の成功と幸福の大半は、他人とどれだけうまくやっていけるかにかかっている。成功と幸福は人によって意味合いが異なるけれども、「人と上手に接する」という共通項がそこにはある。

これは、『心をとらえる60の法則』(マーク・レクラウ著、弓場 隆訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者の考え方。ドイツ出身のライフコーチであり、ジュネーブ・ビジネススクール・バルセロナ校の客員准教授として心理学の教鞭をとっている人物です。

この分野のエキスパートとして知られるレス・ギブリンは、「人と上手に接することができれば、仕事の成功の85%が実現し、人生の幸福の99%が手に入る」と主張しています。

まったくそのとおりです。誰にとっても、人と上手に接することができるかどうかは大きな課題であり、人生の幸不幸を分けることになります。(「はじめに」より)

人と上手に接するためには、それなりの才能が必要とされるようにも思えます。しかし、そうではなく、その方法は後天的に学ぶことができるのだそうです。しかも相手のプライドを傷つけることがないので、お互いに得をするのだとか。

どの分野であれ、成功する人は、人と上手に接する術を心得ているものだと著者は言います。すなわち、(もちろん例外もあるとはいえ)成功と幸福の扉を開く究極の鍵は、人と上手に接することだということ。

それだけでなく、強固な人間関係を築いている人は、たいていは幸せで充実した人生を送ることができるのだそうです。

もちろん、好いてくれと他人に強制することはできません。しかし、少なくとも人と上手に接することができれば、どんな人でも喜んで協力してくれるはず。そこで本書では、人と上手に接するために必要な考え方を紹介しているわけです。

きょうは、第3章「信頼関係を築く」に焦点を当ててみたいと思います。

1. 他人の陰口を言わない

人と上手に接したいのであれば、他人の陰口を言うことは慎むべき。他人の噂話が好きな人は、いつもどこかで他人の悪口を言っている可能性があるもの。

そして、こちらが他人の悪口を言うと、それを聞いている人は「自分もどこかで同じように悪口を言われているのではないか」と勘ぐってしまいます。その結果、自分の評価を落とす羽目になってしまうということ。

したがって、もし誰かが他人の悪口を言い始めたら、あなたにとっての最善策はすぐに話題を変えることです。たとえば、「私は他人のゴシップには興味がないので、お互いの近況について話しませんか」と提案するといいでしょう。

あるいは、「すみませんが、私は他人の陰口を言うのが好きではありません」と単刀直入に言ってもいいかもしれません。(52ページより)

上記の「私は他人のゴシップには興味がないので」「私は他人の陰口を言うのが好きではありません」という部分はやや直接的すぎるようにも思えるので、実際にはもっと穏やかに受け流したほうがいいかもしれません。

しかし、いずれにしても他人の悪口が出てきたら、なんらかのかたちで話題を変える必要はありそうです。

陰口は、大きな誤解の原因になるおそれもあるものです。他人についてまったく無害な話をしたとしても、人から人へと伝わっていくうち、話に尾ひれがつくことはよくあるからです。

そのため、陰口を言うことによって自分の信用を落とさないように細心の注意を払うべき。会話をするときは常に誠実な内容であることを心がけ、お互いが恩恵を得るように配慮することが大切だというわけです。(52ページより)

2. 相手を批判しない

人の心をとらえたいのなら、相手を批判してはいけないと著者は言います。理由はシンプルで、人はみな、批判されるのが大嫌いだから。

それどころか誰もがほめられたいと願い、自分を認めて大切にしてほしいと思っているものでもあります。要は、批判されるのが好きな人はいないと考えるべきだということ。

大切なのは、批判する前に相手の立場に立って考えてみること。私たちが出会うすべての人は、人生で独自の戦いを繰り広げているものですが、それは外側から窺い知れないものでもあります。

私たちも人生で独自の戦いを繰り広げていますが、それがどのようなものかは他人にわからないのと同じ。

むしろ、人には親切に接したいものです。たしかに、言うのは簡単でも、実行するのは難しいかもしれません。しかしそれでも、相手の心をとらえるためにはとても重要なこと。

そこで、相手について気に入らないことがあるときには、少し立ち止まって考えてみるべきだと著者は提案しています。

他人について「いやだな」と感じるとき、私たちは自分について反省する必要があるのかもしれないと著者。なぜなら、自分もその人と同じことをしている可能性があるから。

著者自身も、他人を批判しないようにいつも心がけているのだそうです。理由は、自分が批判している相手と同じ状況に陥っていることに気づいたことがよくあったから。

そのときになって初めて、相手の気持ちを理解することができたわけです。(54ページより)

3. すべての人を許す

他人に恨みを抱いている人と一緒に過ごしたとしたら、決して楽しくはないはず。では、そんな状況に置かれたとしたら、どうすべきなのでしょうか?

この問題を解決する唯一の方法は、相手を許すことだそうです。それは人間関係にとって好ましいだけでなく、成功と幸福への近道でもあるというのです。

相手を許すことは正しいかどうかという問題ではなく、それは平常心を保ってエネルギーを浪費しないための方策。たとえ不当な扱いをした相手であっても許すべきで、それは自分自身のためだということ。

他人に対して恨みを抱き、怒りや憎しみを心のなかで何度も再現することは有害な習慣。それは、心身の健康を損なうおそれすらあるといいます。

著者はこのことについて、「相手を恨み続けることは、自分が毒を飲んで相手が死ぬのを期待するようなもの」だと表現しています。

もしあなたが誰かを恨んでいるなら、今日からすべての人(自分自身を含めて)を許しましょう。繰り返しますが、それは相手のためではなく自分のためです。

いったん相手を許して恨みを捨てれば、心の重荷を取り払うことができます。その結果、ぐっすり眠れますし、現在の人間関係をもっと楽しむことができます。(57ページより)

他人を恨み続けたところで、それはなんの役にも立ちません。それどころか、事態はますます悪化していく可能性も。

なぜなら、いつまでも過去の傷にこだわり続けると、心の持ち方がネガティブになり、さらに不快な経験を引き寄せるおそれがあるからです。

ただし当然のことながら、相手を許すというのは、相手に好き放題させると言う意味ではありません。それは恨みを捨てて過去の呪縛から解放され、ふたたび自由を手に入れることを意味しているのだそうです。

明るい未来を切り開くうえで、これは非常に大切なことだといいます。(56ページより)

4. 約束を守る

長い年月をかけて築いた評判も、一瞬で台無しになることがあるものです。その典型が、約束を破ったとき。口先だけで行動が伴わないのだとしたら、誰にも信用してもらえなくなるということ。

しかし、これは非常に具合の悪い事態でもあるでしょう。なにしろ仕事でもプライベートでも、すべての人間関係は信頼で成り立っているのですから。

しかも約束を破った場合、周囲の人から信用されなくなるだけではなく、自分でも自分のことを信用できなくなるもの。約束を破ることで、自分自身が精神的に大きな痛手を被ることになるということです。

理由は明白です。つまり究極的に、他人との約束は自分との約束でもあるということ。したがって約束を破ると、「私の言葉にはなんの価値もないから、私にはなんの価値もない」というメッセージを自分に対して送ることになるというのです。

そこで著者は、こうした状況を避けるための3つの方法を紹介しています。

1 守れない約束は絶対にしない

2 本気ではないことは言わない

3 すると言ったことは必ずする

(59ページより)

大きなことを約束しておいて、小さなことしかしないとしたら、自分の評判を落とすはめになり、結果として人々は離れていくことになるでしょう。そこで、そうした状況を避けるため、それと正反対のことをするべき。

つまり、小さなことを約束して、大きなことをすればいいのです。そうすれば、周囲の人が高く評価してくれることになるはずです。また、自分自身も自分を高く評価することが可能になります。常に約束を果たしていると、お互いに気分よく過ごすことができるというわけです。(58ページより)

著者も言っているように、ここで紹介されている60の法則は、決して難しいものではありません。それどころか、当たり前のことばかりだとも言えるでしょう。しかしそれらは、どれも忘れがちなことでもあります。

つまり読者は本書を通じ、原点に立ち返り、人と上手に接するための術を再確認することができるのです。是非、参考にしてみてください。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年11月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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