『崩れる政治を立て直す』 牧原出著

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崩れる政治を立て直す 21世紀の日本行政改革論

『崩れる政治を立て直す 21世紀の日本行政改革論』

著者
牧原 出 [著]
出版社
講談社
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784065130773
発売日
2018/09/19
価格
950円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『崩れる政治を立て直す』 牧原出著

[レビュアー] 三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

求められる権力の拮抗

 官邸が自民党と官僚を押さえつける。第二次以降の安倍政権の傾向とされる官邸主導の政官関係や総理と与党との関係は、長年の「改革」に基づいて生じた変化であった。

 改革案を作るときに、制度が動き出してから後の作用に十分思いを致さなかったことで、様々な弊害が生じているというのが本書の見立てである。ガラガラポンが起きない以上は、現行の制度を足したり引いたりしてやっていくほかはない。「改革」をしたからこそ、そのアフターケアが必要だという考え方である。

 現在、日本の官僚組織にはあちこちにひずみが生じている。セクハラや森友学園の公文書改ざんに代表されるスキャンダルのみならず、官邸に対する萎縮(いしゅく)も指摘されて久しい。どうしてそのようなことが起きたのか。本書はその理由を「改革」による官の破壊に求める。

 本書は、第二次以降の安倍政権が本格政権として長期的ビジョンを見据えた政策を行っているという見方にも懐疑的だ。多少点が辛いと思われる節もあるが、確かに、社会保障改革や成長戦略、構造改革に関しては、長期的視野に基づいた改革は進んでいない。

 こうした事態を改善するために、本書が注目するものに独立機関の役割がある。政権から独立した立場で監督や統制を及ぼす立場にあるこうした機関が、実質的に一定程度の牽制(けんせい)を政治に及ぼすことが重要であるとする。本書は、必ずしも強い政権を否定しているわけではない。その政権の強さをバランスするに足る強い官や独立機関が必要だとする指摘は、明晰(めいせき)だ。

 徒(いたずら)な民意の否定でもなく、選挙の負託を全てとする姿勢でもなく、民主主義を健全に保つためには、権力の拮抗(きっこう)の仕組みが必要である。政治主導の改革は必要であった。けれども、決定の負荷が大臣や官邸に集中しすぎることの弊害にも気づく必要がある。本書の指摘は、今後長らく意味を持ち続けるであろう。

 ◇まきはら・いづる=1967年生まれ。東京大教授。専門は行政学。著書に『内閣政治と「大蔵省支配」』など。

 講談社現代新書 880円

読売新聞
2018年11月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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