『カフェノナマエ』 川口葉子著
[レビュアー] 読売新聞
「猫には独特で威厳のある名前が必要だ」と書いたのは英国の詩人T・S・エリオットだ。それを受けて著者は、「カフェに名前をつけるのも、今では猫の名づけと同じくらい難しい」と書き始める。
耳に心地よくて覚えやすく、看板映えする字面、詩的なイメージ。そして何より店構えを体現していなくてはいけない。そんな凝りに凝った名を持つ全国のカフェ320店余が紹介されている。
写真は、大阪市内の細い路地を入った所にある「珈琲(コーヒー)舎・書肆(しょし)アラビク」。昭和初期の長屋を改装した店の名は、中井英夫の推理小説『虚無への供物』に登場するバーから取られたという。見るからにただごとではない雰囲気が醸し出されているではないか。つい、ふらふらと引き込まれてしまいそうだ。
現存する店の住所、電話番号も掲載。これは行くしかない。(良)
キノブックス、1700円