パックンから緊急提言! 「今世界に必要なのは、自分や自分の国に都合のいい思い込み=バイアスを外すこと」

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「日本バイアス」を外せ!

『「日本バイアス」を外せ!』

著者
パトリック・ハーラン [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784093886352
発売日
2018/11/09
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

パックンから緊急提言! 「今世界に必要なのは、自分や自分の国に都合のいい思い込み=バイアスを外すこと」

[レビュアー] パトリック・ハーラン(パックン)(芸人・東京工業大学非常勤講師)

 パトリック・ハーラン
パトリック・ハーラン(パックン)

 いよいよ年の瀬、日本にとって特別な年となる2020年もあと一年余、ぐっと近づいてきた気がします。すでに世界で特別な存在感を持つ日本ですが、2020年にはさらに大きな注目を集めることになります。
 それまでに、この国にある課題のいくつかを可能な限り解決……はできなくても、少なくとも具体的な議論をし始めなくてはいけないのでは、と思ってきました。「原発」「少子化」「移民」「基地」「年金」「北方領土」……。これらの課題はずっと前から「課題」としてこの国に居座ったまま、具体的な解決への前進はあまり見られません(先日の安倍首相とプーチン大統領の会談で、「もしかしたら2島返還で事態が動くか!?」と期待したものの、やはりそう簡単にいきそうにはありません)。
 なぜなのでしょうか――。
 日本はとても安全で幸せな国です。僕もここで暮らし始めてすでに25年以上たちました。この国に骨を埋める可能性はほぼ100%だし、心から日本を愛しています。でも、だからこそ見えてくる心配事を無視できないのです。

「バイアス」という言葉があります。「バイアスがかかった状態」というのは、いわば色のついた眼鏡をかけてしまっている状態のこと。透明なガラスを通してそのまま見るのではなく、色がついてしまっていますから、事実をそのまま受け止めるができません。つまり、「バイアス」というのは、事実と異なる勝手な思い込みや思考グセのことで、これが頭にこびりついていると、真実をそのまま見ることができないので、偏った理解になったり、まちがった判断をしたりすることがあります。
 でもこの「バイアス」、実は人間誰しもがもっていますし、世界中どの国にもその国特有の「バイアス」があります。
 たとえば、楽観主義の僕には何でも「大丈夫だろう」と考えてしまう楽観バイアスがありますし、アメリカには「何があっても、アメリカが世界の中心」というバイアスがあります。だから、多くのアメリカ人(皆ではありません)は、たとえば日本が米軍基地に関して反対の声をあげると、「日本は金も出さずに米軍から国を守ってもらっているのに、ありがたいと思え」という、事実とは異なるとんでもない思いこみ発言をしたりします。
 しかし、もちろん日本には日本のバイアスがあります。これを読んでくださっている皆さんにもそれぞれに「思い込み」「思考グセ」があるはずです。
 大切なのは、自分の中に「バイアス」があることを認識すること。そして、「真実」と言われていることが本当に真実かどうか、客観的なデータと照らし合わせながらチェックすることです。「思い込み」というのは本当に怖いもので、自分の認識が正しいと一度思い込んだら、真実にたどり着くまでは相当の時間がかかります。
 毎年度々話題になる靖国参拝問題などに関しても、僕は長く日本に暮らして、日本人が持つ靖国に対する思いを少しは理解しているつもりですが、世界はそこまで日本人の心情に対する理解が深くありません。ですから、どこまで行っても日本の論点と世界の論点はかみ合わず、平行線のままのような気がします。ほかの課題においても、同じようなズレが生じていると感じます。
 だとしたら、「世界からの視点」を知ることで何か前進できることがあるのではないか、そんな思いで書いたのが、新刊『「日本バイアス」を外せ! 世界一幸せな国になるための緊急提案15』です。読んでくださるかた自身の「バイアス」をはかるクイズも入れました。「バイアス」を外して自分や自分の国に都合のいい「思い込み」を捨て、真実を見る目が少し変わること――実はこれこそが、今一番世界に求められていることなのかもしれません。

撮影:伊藤まゆみ

小学館
2018年11月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

小学館

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