『好日日記―季節のように生きる』
書籍情報:openBD
映画もヒット、ロングセラーの続編、ファンにはたまらぬ一冊
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
16年にわたるロングセラー『日日是好日(にちにちこれこうじつ)――「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫/飛鳥新社)が本年秋に映画化され、本書は公開に合わせて刊行された第2弾である。私もハマった口だが、ファンからすれば待ちに待った一冊だろう。
お茶の世界にも天才はいて、前著で颯爽と登場した「ひとみちゃん」という少女のその後が気になっていたのだが、本書で消息を知ることができた。結婚し、子育てのため「お稽古」をやめているそうな。
著者がお稽古に通い始めた頃40代だった「武田先生」も80歳を超え、少し衰えた。一時は気弱なことも言ったが今は癒え、元通りに教えていることに安堵する。前著を出した時、先生はこう言ったそうな。「こんなふうに感じてくれていたのかと思ったら、涙が出そうになっちゃった」と。このとき著者は胸を熱くし、「私はお茶の先生にはならなかったけれど、本を通じて、私が習ったお茶を読者に伝えることができれば」とあらためて思ったという。
登場人物はすべて仮名で、とすれば武田先生も仮名なのだが、私はこの武田先生に会いたいという願望を抑えることができない。横浜っ子の老婆から十八番(おはこ)の「できるならしなくてよろしい。できないから稽古するの!」という小言を食ってみたいのだ。
武田先生は基本お点前(てまえ)のことしか言わず、無駄口を言わない。そして凛としつつも柔かい佇いの人だ。そんな人に会う手立てはないものか。と考えたら、妙案を思いついた。映画の『日日是好日』を観に行けばいいのだ。武田先生を、先だって亡くなった樹木希林が演じているではないか。そして著者を演じるのは黒木華(はる)だ。どこに不足があろうか。
本書もいずれ文庫化されるのだろうが、前著の文庫の解説は柳家小三治師だ。私より先に著者の世界に魅入られた人だが、今回もまた先を越されるのだろうか。