神社のことをなにも知らない――『境内ではお静かに 縁結び神社の事件帖』 著者新刊エッセイ 天祢涼

エッセイ

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境内ではお静かに

『境内ではお静かに』

著者
天祢涼 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334912512
発売日
2018/11/21
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

神社のことをなにも知らない

[レビュアー] 天祢涼(作家)

「昔からなんとなく神社が好きだし、巫女さんを探偵にすればラブコメっぽいのが書けるな。よし、いける」という閃きから書き始めたのが、この小説である。

 ラブコメ系の少女漫画を愛読しているから楽に書けるだろう、と高(たか)を括(くく)っていた私だったが、すぐある事実に気づく。

「なんとなく好きなだけで、神社のことをなにも知らない」

 まず、神職と神主の違いがわからない(答・神主の正式名称が神職)。巫女になるのに必要な資格もわからない(答・特に資格はいらないが、髪型などに厳しい制限がある)。

 ……と、こんな風に、少し書いては壁にぶつかり、その度に資料を読み漁(あさ)ったり、インターネットで検索し続けたりする羽目に。『ジャーロ』連載中は、毎号、綱渡りだった。

 どうにか最終話を書き終えた直後、友人のツテで神職さんと知り合うことができた。これ幸いと取材させてもらうと、自分の思い違いや認識不足が多々あると判明。新たに得た神社トリビアを盛り込むため、単行本化にあたっては連載原稿を大幅に修正せざるを得なくなった。

 探偵役の巫女と、視点人物(語り手)の雑用係が微笑(ほほえ)ましいラブコメ関係を築いていく裏で、作者は恋愛とは無縁の受験生のような勉強を続けていたのである。

 それでも、執筆中、嫌になったことは一度もなかった。

 身近にあるのに、実態がわからない“神社”。それについて調べることも、小説に組み込むことも楽しかった。夢中で書いていたが、終わってみれば「神社のお仕事小説」という、ありそうでなかなかお目にかかれないミステリーに仕上げられたと思う。

 まだまだ書いてみたい・調べてみたい神社トリビアはたくさんある。主人公二人に「神社のお仕事」をさせているうちに愛着も湧いてきた。ぜひ続編を書きたいので、応援していただければ幸いです。

光文社 小説宝石
2018年12月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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