『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』 畑仲哲雄著

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ジャーナリズムの道徳的ジレンマ

『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』

著者
畑仲哲雄 [著]
出版社
勁草書房
ISBN
9784326603077
発売日
2018/08/31
価格
2,530円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』 畑仲哲雄著

[レビュアー] 森健(ジャーナリスト)

 シリアで拘束されたジャーナリストの安田純平氏が3年余り後、解放された。その際「自己責任」という批判と「取材は当然」と彼をかばう声の二つが起きた。昨今、報道の立場を巡って意見が対立することは珍しくない。本書は報道倫理の問題を現実の事件を参考にしながらケースとして読者に問うた本である。

 原発事故が起きたら、記者を残すべきか退避させるべきか。報道で実名は原則だが、犯罪被害者が匿名を望んだらどうすべきか。記者懇談会でのオフレコ発言で重大な事実が発覚した場合、記者はオフレコを反故(ほご)にしても書くべきか。社会的影響の大きい金融機関の破綻報道は当局発表前に出してもよいか。ネットの記事を削除してほしいと要請された場合、どうすべきか。

 どのケースにも対論と論拠があり、ディベートのように紹介される。その上で著者は過去の類似事件を振り返り、そこで得た知見を披露する。著者は正解を示すわけではないので、読者は自身で考えねばならない。評者としても悩ましい印象ばかりだが、これらの問いはそんな報道を受け取る読者や市民の問題でもある。(勁草書房、2300円)

読売新聞
2018年11月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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