『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』 高野秀行著

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辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』

著者
高野 秀行 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163909196
発売日
2018/10/25
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』 高野秀行著

[レビュアー] 戌井昭人(作家)

グルメの先にあるもの

 ヤバそうなメシ、でも本書にあるのは不味(まず)かったものではない、むしろ意外にも美味(おい)しかったというものが多い。だが、その食材や調理方法は独特で想像を超えているものばかりだ。

 「こんなもの食べられるの?」「食べちゃうの?」と言いたくなるが、世界各地を行く作家、高野さんは躊躇(ちゅうちょ)なく、いや少し躊躇したりもするが、どんどん口の中に入れていく。臭いもの、覚醒するもの、気味の悪いもの、恍惚(こうこつ)を感じるもの、果ては猫が食べるものまで、「うわぁ」と思いながらも、高野さんが口に入れた瞬間、感想を知りたくなる。メニューは、「ラクダ丼」「アマゾンの口噛(か)み酒」「ヒキガエルジュース」「サルの燻製(くんせい)脳味噌(みそ)」など、他にもまだまだあって、食の極致のような物ばかりだが、その土地には、それを食べる理由がある。だから単なるゲテモノではない。

 高野さんの著書は、土地に根づき、その場の人間と密になり、なんだかおかしなことになったり、トラブルに巻きこまれたりするものが多いから、読者の勝手だが、今回もどんどん深みにハマって、最終的には「なんでも食べてください」と思えてくる。とにかく驚くような食のオンパレードだが、あとがきには「この世の中にはこんなものを食べている人たちがいるのかと驚かれただろう。しかし、当然のことながら、これが世界の風変わりな食べ物の全てではない。というより、ごく一部に過ぎない」とあり、まだまだ変テコな食べ物があるのかと想像するだけで、是非とも高野さんに食べにいって欲しいと思ってしまう。

 また本書を読んだら、口の中に入れて胃まで到達させるものに、まずい美味(うま)いなんて評価は無意味のような気もしてきた。それよりも食は己の体にどう作用するかが重要だ。さらに食は思い出を蘇(よみがえ)らせることもできる。とにかくグルメの先は、まだまだ計り知れない食べ物が転がっているようだ。

 ◇たかの・ひでゆき=1966年生まれ。ノンフィクション作家。著書に『謎の独立国家ソマリランド』など。

 文芸春秋 1500円

読売新聞
2018年12月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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